【香港=木原雄士】香港の民主派団体は16日、「逃亡犯条例」改正案の完全撤回や林鄭月娥行政長官の辞任を求める大規模デモを実施した。林鄭氏は15日に改正を延期すると表明し、経済界や欧米には歓迎ムードが広がった。ただ、民主派が求める撤回には応じず、抗議活動が早期に収束するかは不透明だ。
参加者は「中断ではなくすぐに撤回を」などと書かれたプラカードを掲げ、香港島のビクトリア公園から立法会(議会)まで行進した。条例改正に反対するデモは4回目。前回9日は主催者発表で103万人が参加した。一部現地メディアは、今回の参加者が前回を超えそうな勢いだと伝えている。
林鄭氏は15日の記者会見で改正案の審議を期限を定めずに延期すると表明し、年内の審議入りも難しいとの認識を示した。一方で、現在の立法会議員の任期中に審議を再開するかどうかについては明言を避けた。立法会は親中国派が多数を握っており、民主派は「いずれ改正に踏み切るのではないか」と疑っている。
政府が学生らの道路占拠を「暴動」と呼び、催涙弾を使った強制排除で多数のけが人が出たことにも批判が集まっている。16日のデモに参加したケリーさん(24)は「行政長官は警察の行為が行き過ぎだと認めず、とても失望した」と話した。会社員の鄧さん(23)は「政府が聞く耳を持たない時こそ、意見を表明するのが重要だ」と力を込めた。
デモでは15日に大型モールで政府に抗議中に転落死した男性を悼む声も広がった。多くの人が弔意を示す白いリボンを付け、転落現場に花を供えた。
林鄭長官が改正延期を発表した後、経済界や欧米からは決断を支持する声があがった。地元経済団体の香港総商会は「政府の決定を歓迎する。落ち着いて理性的な議論に戻れるようになる」との声明を出した。
条例改正に一貫して反対してきた在香港米国商工会議所は「香港が一国二制度のもとで特別な地位を真剣に守ろうとしているというシグナルを国際社会に送った」と評価した。英国のハント外相もツイッターで「人権擁護のために立ち上がった勇敢な人々の懸念に留意した」と香港政府の判断を歓迎した。
いまのところ香港政府が条例の完全撤回に応じる可能性は低そうで、抗議活動が収束するメドはみえない。香港の政治リスクコンサルタントのスティーブ・ビッカーズ氏は「(改正延期で)一般的な抗議は抑えられるだろうが、(デモなどの)中心にいる活動家の抗議は続くだろう」と指摘する。そのうえで「一般人と警察の間の信頼関係が損なわれており、修復するには時間がかかる」との見方も示した。
16日のデモには、子どもを連れた夫婦や大学生ら若い世代の参加も目立った。民主派と呼ばれる政治的な関心が強いグループの枠を超えた抗議が続いている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46170680W9A610C1FF8000/
2019-06-16 09:32:00Z
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