サム・カブラル、BBCニュース、ワシントン
アルヴィン・ブラッグ氏(49)は2021年、黒人男性として史上初めて、ニューヨーク地区検事に公選された。そのブラッグ検事が浴びる歴史のスポットライトは、ますますまぶしさを増している。
金曜の夜に検察事務所を後にしたブラッグ氏は、集まった報道陣に対して無言だった。(罪状が連邦レベルか州レベルか地区レベルかを問わず)アメリカの大統領経験者を刑事事件の被疑者として訴追した史上初の検察官として、自分の名前が今後、歴史書に刻まれ続けるのは、本人も承知していたはずだ。
ブラッグ検事が率いる検察チームは、ドナルド・トランプ氏(76)と元ポルノ女優の間に交わされたとされる口止め料の支払いについて、捜査を続けてきた。
ニューヨーク州出身で共和党所属のトランプ氏は、一切の不法行為を強硬に否定している。自らのソーシャルメディア「Truth Social」では、自分がニューヨークで公平な裁判を受けられるとは思っていないと書いた。
「偽で腐敗してみっともない訴えを連中が僕に対して起こしたのは、自分がアメリカ国民と共に立っているからで、ニューヨークでは僕が公平な裁判を受けられないと知っているからだ!」と、トランプ氏は強調した(太字は、原文で大文字記載)。
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ニューヨーク州マンハッタン地区の検事を務めるブラッグ氏は、ベテラン検察官として2022年初めに地区検事に就任。公選時の公約は2つのテーマを柱としていた。刑務所で服役させるのではない別の形の処罰方法の推進がひとつ。もうひとつは、ホワイトカラー犯罪と公職者の汚職の起訴強化だった。
地区検事を目指す選挙運動で、ブラッグ検事は自分の経歴を強く打ち出し、その中でいかに検察改革の重要性を痛感するようになったかを強調していた。検事は、1980年代にクラック・コカイン中毒が蔓延(まんえん)していた当時のニューヨーク市ハーレム地区で生まれ育った。
警官に銃を突き付けられたこと、自宅の玄関前に殺人事件の被害者が倒れていたこと、そして義理の兄弟が一時拘束され、その後しばらく同居していたことなど、自分の経験から検事は語っていた。
ハーヴァード大学と同ロースクールで学んだブラッグ氏は、検察官になるとホワイトカラー詐欺事件や公民権運動を専門とした。2014年に黒人男性、エリック・ガーナー氏がニューヨーク市の警官に取り押さえられて死亡した事件では、遺族を代表して審問にかかわった。
ブラッグ検事は、連邦と州のさまざまなレベルで検察官を経験している。ニューヨーク州南部地区の連邦地検で次席検事を務めたほか、ニューヨーク州の司法副長官、ニューヨーク市議会の首席法廷弁護士などを経ている。
2022年1月に現職に就任して間もなく、ブラッグ検事はマンハッタン地区における起訴や保釈、罪状認否や量刑言い渡しについて、新しい方針を詳細に発表。公共交通機関の無賃乗車や大麻関連の軽微な罪など、軽罪について自分たちは今後、起訴しない方針を示した。
これについてニューヨーク市警や経済界から強い反対の声が相次ぎ、ニューヨーク市内の暴力犯罪件数増加とあいまったことから、ブラッグ検事は謝罪と方針撤回に追い込まれた。
それ以降、ブラッグ検事は自分の就任後に市内の重大事件や凶悪犯罪は減少していると指摘する。一方、検事をかねて批判し続けてきたトランプ氏やその支持者は、ブラッグ検事を犯罪者に甘い「過激な」リベラルだと攻撃する。
ブラッグ検事の就任から間もなく、地区検事事務所から検察官2人が辞職した。その1人は、辞職理由としてブラッグ新任検事の「不見識」を非難。前任のヴァンス検事と異なり、ブラッグ検事がトランプ氏を訴追したがらないせいで、トランプ氏に対する捜査は「無期限に中断」されてしまったとしていた。
これに対して地区検事事務所は、捜査は進行中で「これまで検討していなかった証拠を検討している」と述べていた。
昨年12月、「トランプ・オーガナイゼーション」の子会社2社が脱税などの罪で起訴された事件で、ニューヨーク州裁判所の陪審は6日、全ての罪で有罪とする評決を下した。立件したのはブラッグ検事とそのチームだった。この際、トランプ氏自身は起訴されなかったものの、トランプ・オーガナイゼーションで長年財務トップを務めたアレン・ワイセルバーグ被告は有罪となり、禁錮5カ月の判決で現在服役中。
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ブラッグ検事は今年1月、陪審員として無作為に選ばれたニューヨーク市民23人からなる大陪審を招集。ダニエルズ氏への「口止め料」支払いに関する捜査で、トランプ氏を起訴するだけの証拠が得られているか、評議を求めた。
評議の結果、大陪審は3月31日、トランプ氏の起訴を評決した。この歴史的な起訴は、今後の展開に巨大な影響をもたらす可能性がある。トランプ氏が2024年大統領選で再選を目指す中、起訴に憤慨する多くの支持者がいきり立ち、勢いを増し、そのままトランプ氏を再びホワイトハウスの住人するという展開もあり得るからだ。
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2023-04-02 02:57:46Z
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