Jumat, 19 April 2019

メール暴露の動き、トランプ氏の長男と娘婿は知っていた - 朝日新聞

 ロシア疑惑の捜査にトランプ氏が介入した「司法妨害疑惑」について、捜査報告書は10件の事例を詳述した。連邦捜査局(FBI)長官を解任したり特別検察官の解任を画策したり、あの手この手で捜査を中止させようとするトランプ氏の姿が浮かび上がった。

 マラー特別検察官による捜査報告書の要旨は以下のとおり。

 【2016年大統領選への介入】

SNSの悪用

 ロシア政府による大統領選への介入はトランプ氏の応援が目的で、2016年半ばに画策が表面化した。介入の方法は二つあった。

 その一つは、ロシアの企業インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)によるソーシャルメディアの利用。同社運営者はロシアのプーチン大統領とつながりがあるとされる。

 IRAは14年半ばから、機密情報の収集のためにスタッフを米国に派遣。「情報戦争」の名のもと、フェイスブック(FB)やインスタグラム、ツイッターやウェブサイトを悪用した。

 FBによると、IRAの運営アカウントは470件。15年1月~17年8月に8万件の投稿をして、広告3500件を約10万ドル(約1120万円)で出した。約1億2600万人が情報に触れた。また、ツイッターによると、IRAは3814アカウントを持ち、約140万人とつながった。

 これらのアカウントを使い、米国の企業や国民を名乗ってトランプ氏を支援する投稿や広告を載せた。偽情報も含まれていた。選挙集会を開いて支援者を増やし、草の根の運動を展開。大統領選の対立候補だったクリントン氏を侮辱する情報も流した。米国政治を分断する試みだった。

違法なハッキング

 もう一つの介入は、ロシアの軍参謀本部情報総局(GRU)の二つの部隊が、クリントン陣営のコンピューターに違法アクセスして、盗んだ情報を暴露することだった。

 GRUは16年3月、クリントン陣営のボランティアや職員のハッキングを始めた。約90通の偽メールを送るフィッシング攻撃で翌4月までに民主党のネットワークの侵入に成功。電子メールや選挙戦略、資金集めなど大量の記録を盗んだ。

 GRUは内部告発サイト「ウィキリークス」を使った。同年7月にウィキリークスが公表し始めた情報には、クリントン陣営の選挙対策本部長のメールから盗んだ計5万件以上の記録が含まれた。

 こうした暴露の動きについて、トランプ氏の長男ジュニア氏や娘婿クシュナー氏らは、同年6月上旬に●●(注・報告書で黒塗り)から事前に聞いていた。

ロシア側との接触

 介入作戦と並行して、トランプ陣営とロシア政府の関係者は様々な案件で接触した。モスクワでの「トランプタワー」建設計画やトランプ氏とプーチン氏の会談への誘いなどだ。16年の大統領選後には、在米ロシア大使館職員が「プーチン氏からの祝意」を伝えた。

 同年12月、これらの介入を受けてオバマ大統領(当時)が対ロシア制裁を発動すると、後にトランプ氏の大統領補佐官となるフリン氏は、キスリャク駐米ロシア大使(当時)に会い、冷静な対応を求めた。プーチン氏は報復しない考えを示し、同大使は、フリン氏の要求に基づく決断だったとフリン氏に伝えた。

共謀は証拠不十分

 これらの介入は詐欺や窃盗などの違法行為と認定され、関係者は訴追された。トランプ陣営とロシア政府および関係者の多くのつながりも特定した。だが、両者の共謀や協力を立証するには証拠不十分だった。

 【司法妨害疑惑】

 ロシア疑惑の捜査に対して、トランプ氏側による10件の「司法妨害疑惑」が判明した。あの手この手で捜査を中止させようとするトランプ氏の姿が浮かび上がった。

①フリン氏への捜査を妨害した疑惑

 17年1月、フリン氏は副大統領や政府高官、連邦捜査局(FBI)捜査官の聴取を受け、キスリャク氏との面談の中身を否定。FBIが捜査に着手した。

 トランプ氏は同月下旬、コミーFBI長官(当時)をホワイトハウスでの夕食に誘い、忠誠を要求。フリン氏が辞任した直後の2月中旬にも執務室でコミー氏と1対1の面談をして、「フリン氏をやり過ごしてほしい。彼はいいやつだ」と迫った。

 トランプ氏は、問題となったフリン氏とキスリャク氏の面談は自身が指示したものではないとする手紙を(フリン氏の部下の)副補佐官に書かせようともしたが、断られた。

②コミー氏への圧力疑惑

 同年3月、コミー氏は議会の公聴会で、ロシア疑惑を捜査していると証言。トランプ氏は、コミー氏に直接連絡しないようホワイトハウスの法律顧問マクガン氏(当時)に助言されたが、公聴会後に2回電話をした。トランプ氏によると、その際にコミー氏はトランプ氏が捜査対象ではないと回答。トランプ氏は、ロシア疑惑の「暗雲を取り除く」ため、その事実を公表するよう求めた。

③コミー氏の解任理由をめぐる疑惑

 同年5月、コミー氏は再び議会の公聴会に出たが、トランプ氏が捜査対象かどうかは言わなかった。怒ったトランプ氏は、コミー氏の上司にあたるセッションズ司法長官(当時)に「ジェフ(セッションズ氏)、本当にひどい。司法長官は最も重要なポストで、ケネディ元大統領は(信頼の厚い)弟のロバート氏を指名しているが、俺はまるで孤島にいるようだ」と述べた。

 数日後、トランプ氏はコミー氏を解任。コミー氏に理由を告げる書簡の中で、トランプ氏は「失望した」とした上で、コミー氏がトランプ氏を捜査対象としていないと述べていたことも記した。

 トランプ氏はテレビのインタビューで、コミー氏を解任したことについて「アメリカ人のために正しいことをやった。トランプとロシアの関係は全て作り話だ」と訴えた。

④マラー氏解任を画策した疑惑

 同年5月、コミー氏解任後、マラー氏が特別検察官に任命されたことを知ると、トランプ氏は「私の大統領職は終わった。もうだめだ」と周辺に漏らした。

 トランプ氏はこの人事に怒り、セッションズ氏の辞職を一時要求。過去の経歴を理由に、マラー氏が不適任だとも側近らに主張したが「意味のない主張だ」といさめられた。

 トランプ氏は同年6月、マクガン氏に電話して、マラー氏を辞めさせるよう命じたが、マクガン氏は従わず、「それをするなら自分が辞める」と伝えた。

⑤捜査が「不公正」だと言わせようとした疑惑

 同年6月、トランプ氏はセッションズ氏への伝言をルワンドウスキ元選挙運動本部長に託した。捜査が大統領にとって「非常に不公正」であり、大統領は間違ったことをしていないと、セッションズ氏自ら公表するよう求める内容。ルワンドウスキ氏は伝言役を別の政府高官に頼んだが、その高官は実行しなかった。

⑥ロシア側の介入の情報を隠した疑惑

 同年夏、ジュニア氏やクシュナー氏が16年にニューヨークのトランプタワーでロシア人弁護士と会ったと報じられた。

 トランプ氏は、面会の日程調整などのメールを公表しないよう、側近らに繰り返し要求。さらに、報道を受けてジュニア氏が作った声明から「(ロシア人弁護士が)選挙に有益な情報を持っていたかもしれない」という文言を削除し、代わりに、面会はロシア人の子どもを養子にするためだったと書き加えた。

 トランプ氏の顧問弁護士は、声明へのトランプ氏の関与について報道陣に繰り返し否定した。

⑦司法長官に捜査権限を移させようとした疑惑

 17年夏、トランプ氏は自宅にいたセッションズ氏に電話して、ロシア疑惑の捜査に復帰するよう求めた。セッションズ氏は応じなかった。同年12月にも、トランプ氏はセッションズ氏と大統領執務室で面会し、同氏が捜査権限を取り戻せば「英雄」になると告げた。トランプ氏は「私はただ、公正に扱われたいんだ」と述べたが、セッションズ氏は応じなかった。

⑧フリン氏への圧力疑惑

 同年11月、フリン氏がFBIの事情聴取に偽証した容疑に関して司法取引に応じて罪を認めると、トランプ氏の法律顧問がフリン氏の弁護士に「トランプ氏は温情を示している。トランプ氏の情報があったら教えてほしい」と伝えた。何も情報を共有できないとフリン氏の弁護士が答えると、法律顧問は、フリン氏の態度がトランプ氏への「敵意」を示しており、トランプ氏に必ず伝えると述べた。

⑨マラー氏解任画策報道を否定させようとした疑惑

 18年1月、マラー氏解任をトランプ氏が画策したとの報道が出たため、トランプ氏は側近らに命じて、マクガン氏が報道を否定する声明を出すよう仕向けた。マクガン氏は側近らに、報道は正しいと反論。そこでトランプ氏はマクガン氏に会い、報道を否定するよう直接圧力をかけ、なぜ(マクガン氏を事情聴取した)マラー氏に解任画策の件を述べたのか問いただした。

⑩コーエン氏に偽証させた疑惑

 17年にトランプ氏の元顧問弁護士のコーエン氏が議会で偽証した際、トランプ氏の法律顧問は事前にコーエン氏に何度も連絡を取り、「トランプ氏の発言と矛盾しないように」と助言していた。18年4月、FBIがコーエン氏の自宅を捜索した数日後には、トランプ氏は「気を強く持て」とコーエン氏を電話で激励。将来的なコーエン氏への恩赦についても、同氏とトランプ氏の法律顧問との会話で話題になっていた。その後、コーエン氏が捜査に協力する姿勢に転じると、トランプ氏はコーエン氏を「ドブネズミ」と呼び、彼や彼の家族が罪を犯したと強調した。

判断できるのは議会

 司法省の法律顧問室は「現職大統領の起訴・刑事訴追は、憲法で課せられた行政責任を果たす機能を損ねるので、できない」との見解で、同省は現職大統領を起訴しない方針だ。司法妨害か否かを判断できるのは議会だけである。

 司法妨害を犯していないと確信しているなら、そう記述する。だが、事実と妥当な法的規範に基づき、そうした判断はしなかった。この報告書は、大統領が罪を犯したとは結論づけないが、潔白ともしない。(構成・飯島健太、軽部理人、宋光祐、篠健一郎

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https://www.asahi.com/articles/ASM4M6CQJM4MUHBI03L.html

2019-04-19 14:13:34Z
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