2019年4月20日(アメリカ東部時間)、米フロリダ州ケープ・カナベラル空軍基地でスペースX社の有人宇宙船クルードラゴンのエンジン燃焼試験中に事故が発生した。NASAのジム・ブライデンスタイン長官は、「ドラゴンのスーパードラコエンジンの燃焼試験中に異常が発生した」と認めた。怪我人はなかったという。
スペースXは3月3日に有人宇宙船クルードラゴンの試験機を無人で打ち上げ、国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングさせ地球に帰還させるDemo-1試験に成功した。事故が起きた機体はDemo-1で使用した機体で、打ち上げ中の飛行中止性能の試験に備えて「スーパードラコ」エンジンの燃焼試験を行っていた。
20日中にエンジンの試験は複数回行われる計画で、最初に行われた数回の試験では問題がなかったものの、最終試験でなんらかの燃焼異常が起きたと見られる。フロリダ州の現地紙フロリダ・トゥデイによれば、試験サイト方面から煙が立ち上っている様子が目撃されている。
スペースXが実施していた飛行中止性能の試験はインフライト・アボート・テストと呼ばれるもので、有人宇宙船の打ち上げ後に何らかの異常が発生した際に宇宙船をファルコン9ロケットから切り離し、宇宙船とクルーを安全に帰還させるためのものだ。クルードラゴンに搭載されたスーパードラコエンジンはロケットからの切り離しや飛行経路の修正に使用される。
インフライト・アボート・テストは7月に予定されていたクルードラゴンの有人打ち上げ試験(Demo-2)に先駆けて行われるものだ。NASAの商業宇宙輸送計画サイトの4月3日付け発表によれば、スペースXの試験日程は2週間以内に再設定される予定となっていた。燃焼試験の結果なども試験日程に反映されるものと思われるが、異常が起きたため大幅な延期が予想される。
NASAの有人宇宙船開発計画はこれまでにもたびたび遅延が起きているが、宇宙船を開発するスペースX、ボーイングだけでなく計画を主導するNASA側も遅延リスクを抱えている。2018年7月、米会計検査院(GAO)は、有人宇宙船の安全性に関わる認証プロセスに不備があり、運用可能になるまでさらなる遅れが発生するリスクがあると指摘した。これはNASAが有人宇宙船でのクルーの安全に関わる評価を首尾一貫したプロセスに詰めきれていないからだという。新型宇宙船の安全基準は「210日間のISS滞在ミッション270回中クルー死傷の可能性が1回以下」となっている。ところが、機体の評価の仕方が一貫しておらず、異なるやり方をすると異なる結果が出る。このため審査が完了できない、というのがGAOの指摘だ。
GAOが懸念するNASAの認証完了はスペースXの場合で2020年1月、ボーイングの場合は2019年12月だった。現在、宇宙飛行士はロシアのソユーズ宇宙船でISSと往復している。NASAが現在持っているソユーズの搭乗権は2019年11月までのため、宇宙飛行士1人、1回あたり8100万ドル(約90億円)の費用を追加し、搭乗権を購入する必要がある。
NASAはGAOの指摘を受けて審査基準を5月までに確定させ、文書で発表することとなっていた。期限が迫る中で宇宙飛行士の安全に直結する飛行中断試験に向けた準備中に事故が起きたことで、さらなる延期の可能性は高いと考えられる。
https://news.yahoo.co.jp/byline/akiyamaayano/20190421-00123206/
2019-04-21 11:25:00Z
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