国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の一部職員が、昨年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃に関与した疑いが浮上するなか、アメリカなど9カ国が資金拠出を停止すると発表した。これを受けてUNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は27日、「ショッキング」な決定だとして、9カ国に再考を求めた。
ラザリーニ事務局長は「複数の国がUNRWAへの支援停止を決定したため、命を救う私たちの支援活動が終わろうとしている」として、声明で「本日をもって9カ国がUNRWAへの資金拠出を一時停止した。その決定のため、この地域全域と特にガザ地区における人道支援活動の継続が、脅かされている」と述べた。
事務局長は、「少数の職員に対する疑惑への反応で、当機関への資金拠出が停止されるのはショッキングだ。UNRWAはその職員たちの契約を切り、第三者機関による透明性のある調査を依頼するといった対応を、ただちにとったにもかかわらず、拠出停止となった」とも述べた。
UNRWAの一部の職員が、ハマスによる昨年10月7日のイスラエル攻撃に関与していたとの指摘を受けて、オーストラリア、カナダ、フィンランド、ドイツ、イタリア、オランダ、スイス、イギリス、アメリカの9カ国がUNRWAへの資金拠出を停止した。
攻撃関与の情報はイスラエルが公表したもの。イスラエルはかねて、UNRWAを含む国連の諸機関がイスラエルに対して偏向しており、時には反ユダヤ主義的だとさえ非難してきた。
UNRWAは1949年に設置され、ガザで活動する最大の国連機関。ガザ、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区やヨルダン、レバノン、シリアに住むパレスチナ難民に、医療や教育などの人道支援を提供する。ガザ地区内では約1万3000人を雇用している。
ハマスによるイスラエル攻撃を機にイスラエル軍がガザ地区での攻撃を開始して以来、UNRWAはガザ地区各地に持つ施設を避難所として、家を失った何十万人もの住民を保護してきた。
ラザリーニ事務局長は声明で、「UNRWAはガザにおける主要な人道支援機関で、200万人以上がただ生き延びるためにUNRWAを必要としている。飢饉(ききん)が迫りくるなか、大勢が空腹を抱えている。UNRWAの避難所には100万人以上が暮らしている」と指摘。
事務局長はさらに、「一部の人間が犯罪行為で疑われているからといって、この機関と一つのコミュニティーの全員を制裁するなど、まったく無責任なことだ。特に、戦時において。この地域全体で大勢が住む場所を失い、政治的危機が起きている最中において」とも述べた。
ラザリーニ氏は、「UNRWAはその全職員の名簿を毎年、イスラエルを含むホスト国と共有している。特定のスタッフについて懸念を指摘されたことは一度もない」としたうえで、国連事務局の内部監査室がすでに「極悪な疑い」について調査に着手していると説明した。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の顧問、マーク・レゲヴ氏は26日にBBCに対して、昨年10月のハマスの攻撃には「(UNRWAから)給料を支払われている複数の人物」が関与していたと話した。
レゲヴ顧問は、UNRWAが運営する学校で働く教師たちが、ハマスの攻撃を「公然と祝った」のだと話した。この時の攻撃でハマスの戦闘員は、民間人を中心に約1300人を殺害し、約250人を人質にした。
レゲヴ氏はさらに、ハマスに拉致された後に解放された女性が、「UNRWAで働く人の家で捕らわれていた」と発言したことに言及。「ハマスが束ねる労組もある。国連はもういい加減、UNRWAとハマスのつながりを調査するべきだ」と述べた。
イスラエル側のこの主張を受けて、アメリカなど主だった資金拠出国がただちに反応した。
イギリス外務省は27日に声明で、「イスラエルに対する10月7日の攻撃にUNRWA職員が関与していたという疑惑に、イギリスは愕然(がくぜん)としている。イスラエルへの攻撃は、凶悪なテロ行為で、これをイギリス政府は繰り返し非難してきた」、「懸念される疑惑を検討する間、イギリスはUNRWAへの今後の資金提供を一時的に停止する」と述べた
これに先立ちアメリカの国務省は、UNRWA職員についてイスラエルが指摘する疑惑を「非常に憂慮」しているとして、資金拠出の一時停止を発表した。
欧州連合(EU)は、「全面的かつ包括的な調査の結果をもとに」今後の対応を判断するとしている。
UNRWAの運営資金の大きな部分を、アメリカ、ドイツ、EUが提供してきた。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「とんでもないニュースだ」と述べた。
イスラエルのイスラエル・カッツ外相は、今の戦争が終わった段階で、ガザ地区でのUNRWAの活動をやめさせるつもりだと述べた。
他方でパレスチナ自治政府のフセイン・アル・シェイク民生長官は、一部の国がUNRWAへの資金拠出を一時停止することは「政治的にも、人道援助にとっても、非常に大きいリスクを伴う」と懸念を示した。
ハマス運営のガザ保健省によると、昨年10月7日以降にイスラエルの攻撃でガザ地区では2万6000人以上が殺されている。
UNRWAによると、3カ月以上の戦闘で、ガザの人口の約75%にあたる推定170万人が住む場所を失っており、その多くに人道援助がなかなか届けられずにいるという。
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2024-01-28 03:29:59Z
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