中国共産党の習近平総書記(国家主席)が抜てきした外相が突然更迭され、盤石に見える習氏の権力基盤のほころびが図らずも露呈した。
中国ウオッチャーによれば、昨年末に駐米大使から外相に就いた秦剛氏がわずか7カ月で解任されたことは、他の経験豊富な候補者を差し置いて秦氏を推した習氏にとって痛手だ。
習氏の支配を脅かす深刻な事態が生じている兆しはないが、外交面の今回の混乱だけでなく中国が直面している問題は多岐にわたり、その一部は習氏自身が主導した政策にも及ぶ。
中国、外相を秦剛氏から王毅氏に交代-人民銀総裁に潘氏指名
習指導部が仕掛けた米国とのイデオロギー闘争は、中国による先端半導体へのアクセスを阻止しようとする欧米の取り組みに拍車をかけた。
習氏がロシアのプーチン大統領と「制限なし」の友好関係をうたった2022年2月の宣言は主要な貿易相手国から大きな批判を招いた。習指導部が昨年12月まで堅持していた厳格な新型コロナウイルス対策の影響が長引き、中国の経済成長は予想を下回り続けている。
つまずき
株式相場も低迷。政府は地合いを支えようと取り組んでいるものの、世界最悪クラスのパフォーマンスだ。
アジアソサエティー政策研究所中国分析センターのエグゼクティブディレクター、ベイツ・ギル氏は「これら全てが問題であり、習氏の3期目にとって幸先の良いスタートではない」と指摘。
秦氏を巡る状況は「党・政府の最高指導部に存在すると思われる長引く政治的緊張を管理することに、習氏がいくらか手を焼いていることを示す一つの指標かもしれない」と述べた。
習氏の国家主席3期目は昨年10月にスタート。その数週間後に習氏の権力掌握に疑問を呈するかのような「ゼロコロナ」政策に対する抗議デモが発生した。デモ参加者の中には、毛沢東初代国家主席以来、中国で最も強力な指導者となった習氏の退陣を求める声さえあった。
中国はほぼ一夜にして大規模検査やロックダウン(都市封鎖)、国境閉鎖を伴うゼロコロナ政策の主要部分を放棄。米国などで見られた死者急増を防ぐためにゼロコロナは不可欠だと言っていた共産党にとって、極めて異例の政策急転換となった。
ゼロコロナ政策打ち切り後、中国でも人口の多い浙江省で今年1-3月(第1四半期)の火葬件数が前年同期比72.7%増えたと地元メディアが今月報じたが、このデータは後に削除された。
香港城市大学の劉冬舒助教(中国政治)は「ゼロコロナは習政権の成功を示す一例だったが、かなりの災厄に急転した」と語った。
ゼロコロナの傷跡に習体制下の数年にわたる大きな政策転換が重なり、消費者と民間セクターは支出を抑えており、世界2位の経済大国は一種の信頼感の危機に直面している。
路線変更
今年の公式目標である5%前後の経済成長達成が危うくなり、デフレに陥る瀬戸際にあるとの懸念も生じる中で、習指導部は長年の締め付けで痛手を負った民間投資家を引きつけようと大がかりなメッセージキャンペーンに乗り出した。
政府は今月、国内テクノロジー企業に対する規制強化の終了を示唆。相次ぐ規制で株式市場では巨額の時価総額が失われ、世界最大の新規株式公開(IPO)が頓挫していた。
習氏が路線を変えようとしているもう一つの兆候は、今週発表された中国人民銀行(中央銀行)総裁への潘功勝氏起用だ。
潘氏は昨年10月、共産党中央委員会から外れ、人民銀総裁を退任する易綱氏の後任に習氏が自身に忠実な人物を任命する準備を進めているとの見方が強まっていた。
1990年代以降、人民銀総裁任命時に党中央委員でなかったのは潘氏が初めて。アジアソサエティー政策研究所の中国分析センターで中国政治を研究するニール・トーマス氏によると、景気失速を受け習氏は最近「忠誠心よりも専門知識を優先」している。
ユーラシア・グループの中国・北東アジアコンサルタント、ジェレミー・チャン氏は「ここ数カ月、習氏がとりわけ慎重なアプローチを強めているのは明らかだ。昨年秋の行動から想定されたゴリラのボスのようにはなっていない」と話した。
原題:Xi Protege’s Sudden Removal Adds to Rough Start for Third Term (抜粋)
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2023-07-27 12:20:08Z
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