日本では医療従事者から接種が始まった新型コロナウイルスのワクチン。英アストラゼネカが2月に製造販売の承認を申請し、厚生労働省が審査している。日本政府が調達する契約を結ぶ3社の中で、唯一国内で生産することから、承認されれば安定供給を見込める。日本法人でワクチン事業のトップを務める田中倫夫氏に、戦略について話を聞いた。
――すでに国内で生産が始まっています。
「第一三共とKMバイオロジクス(熊本)で、輸入した原液(を容器に充塡(じゅうてん)するなど)の製品化を進めています。今後は、JCRファーマ製の原液を製品化することになります」
――田村憲久厚労相は「5月中の承認を目指す」と言及しています。見通しは?
「まずしっかりと(国内外で臨床試験〈治験〉をした)データを出して審査して頂き、田村厚労相が言う5月を目指したい」
――原液の製造から出荷まで国内で手がける「国内生産ワクチン」ができるのはいつになりますか。
「承認を頂くタイミングになります。仮に5月に承認されれば、順次、国内生産に切り替えていきます」
――在庫は現在どの程度ありますか。
「開示していません」
――当初は5月より早い時期の承認を目指していませんでしたか。
「治験データの提出時期などで、審査状況はあらゆる要因で変わっていきます」
――70カ国以上で使用を許可されていますが、米国で承認されていません。
「米国では、米国内での大規模な臨床試験が求められるからです。先日その結果が出たので、使用許可の取得を期待しています」
――米国で承認されていないことが、日本の審査に影響を与えていませんか。
「70カ国以上で使用許可がありますし、米国で3万人以上が参加した治験結果も出しました。早い承認を目指していきたいです」
――日本政府が契約する米ファイザー製や米モデルナ製は、有効性が約90%あります。アストラゼネカ製は70%と低いです。
「試験は実施方法、地域、参加した人が違うので、結果にかなりブレがあり、比較が難しい。ファイザーやモデルナの結果は素晴らしいと思うが、弊社のワクチンと比較してのコメントは控えます。ワクチンの本来の目的は集団免疫を得ることなので、多くの量をお届けしたい。セ氏2~8度で保存が出来ることは他の製品に比べ扱いやすい。瓶に1回針を刺しても、室温で6時間置いておけます。使い方の柔軟性が高いワクチンだと思います」
――日本政府と1億2千万回分を供給する契約を結んでいます。そのうち、3月末までの3千万回分は輸入で賄う方針でした。
「当初、欧州から製品を輸入する予定でした。しかし1月末に欧州からの輸出が許可制になるなど、管理が強化されてしまいました。そのため予定を変更して、米国から原液を輸入し、日本国内で製品化をすることにしました」
――3月中に3千万回分の供給はできますか。
「前提として承認されるまで、供給を始められません。仮に5月に承認されても、3月中に3千万回分を供給していたら使い切れません。最初の数週間は安全性を評価する必要があるからです。また、ワクチンは有効期間が6カ月です。承認されていない段階で先走ってつくり、廃棄することになってしまっては意味がありません。接種の進み具合をみて供給していきたいです」
変異株への効果は
――1億2千万回分はいつまで…
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2021-03-31 20:30:00Z
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