【ニューヨーク=山内菜穂子】バイデン米大統領は19日、南部ジョージア州アトランタで演説し、アジア系女性6人を含む8人が死亡した銃撃事件に関連し「米国に憎悪の居場所はない」と断固として立ち向かう考えを示した。米国ではアジア系住民に対する差別や暴力が深刻になっており、今回の事件を機に動揺や怒りの声が広がっている。
バイデン氏はハリス副大統領とともにアトランタを訪れた。今回の訪問は当初、1.9兆ドル(約200兆円)規模の追加経済対策をアピールするために組まれたものだったが、銃撃事件を受けて急きょ目的を変更。現地のアジア系団体や自治体の首長らと意見交換した。バイデン氏はコロナ禍でアジア系を狙う犯罪の件数が急増したと指摘。「全米で憎悪や暴力が隠されてきた。沈黙は共犯だ、声を上げていく」と語った。
バイデン氏に先立ち演説したハリス氏は、第2次大戦時の日系人の強制収容などの歴史に触れ、「人種差別、外国人排斥、性差別は米国で現実にある」と指摘した。ハリス氏はツイッターに「アジア系アメリカ人に知ってほしい。私たちは沈黙しない、暴力には必ず声を上げる」と投稿した。
銃撃事件を受け、バイデン氏は18日にホワイトハウスと国内外の連邦政府の施設で22日まで犠牲者を追悼するため半旗を掲げるように指示した。
バイデン氏が矢継ぎ早に対応を打ち出すのは、アジア系を狙った犯罪増加への危機感や政治的な背景があるからだ。トランプ前大統領が新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と言及したこともあり、コロナ禍でアジア系への暴力や差別が広がった。バイデン氏は11日の演説の中で「アジア系が(新型コロナの)スケープゴートにされている」と語り、アジア系への犯罪を強く非難していた。
有権者数が急増するアジア系はバイデン氏にとって重要な支持基盤でもある。米政府統計などによると、アジア系アメリカ人が全人口(約3億3500万人)に占める割合は約5%だが、2010年からの7年間で25%以上増えている。米ピュー・リサーチ・センターによると、アジア系の有権者数は00年からの20年間で2倍以上に拡大。特に共和党・民主党の勢力が拮抗した地域ではアジア系の存在感が高まっている。
今回の事件がヘイトクライム(憎悪犯罪)にあたるかどうかも議論になっている。地元の捜査当局によると、逮捕された容疑者の男(21)は人種差別を否定し、性依存症が要因などと主張している。捜査当局は捜査中として憎悪犯罪にあたるかどうかの判断を明らかにしていない。
米メディアによると、米連邦捜査局(FBI)も捜査に協力しており、人種差別とミソジニー(女性嫌悪)が動機となった可能性があるとみているという。ジョージア州と連邦政府は追加の罰則を科すヘイトクライム法を制定しているが、動機を立証することが難しいため、実際に適用されるのは少ないとの指摘もある。
アジア系住民の間では、差別や嫌がらせを受けてもヘイトクライムとして扱われないことが多いとの不満が募っているという。こうした現状に、アジア系への犯罪をやめさせようと声をあげる動きがアジア系を中心に広がってきた。ツイッターでは「#StopAsianHate」といったハッシュタグをつけた投稿が急増したほか、首都ワシントンなど各地で抗議集会が開かれた。米タイム誌はアジア人女性のイラストとともに「私たちは黙らない」とのメッセージを表紙に掲載した。
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2021-03-19 23:00:45Z
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