【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米政権は、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が30日に「香港国家安全維持法」を可決したことを受け、香港の高度な自治や言論の自由を保障する「一国二制度」を根本的に脅かす行為だとして、各種の対抗措置で中国に対する圧力を一層強めていく方針だ。
ポンペオ米国務長官は同法可決に先立つ6月29日、中国による香港へ国家安全法制を導入する動きを受け、米国が香港に認めてきた軍民両用の技術に関する輸出を中国本土と同様に制限すると発表。香港への優遇措置見直しの第1弾と位置付け、「香港の実情に合わせてさらなる措置を講じていく」と表明した。
ポンペオ氏は声明で「中国は今や香港を『一国一制度』として扱っている」と批判し、米国も香港を中国と同様に扱うとした。
今回の措置は「米国の安全を守るため」とし、「軍民両用技術が、あらゆる方法で中国共産党の独裁維持を図る人民解放軍の手に落ちる危険を冒すことはできない」と説明した。
声明はまた、今回の措置に踏み切らざるを得なかったのは、中国が香港の「高度な自治」をうたった1984年の中英共同宣言を順守していないためだとし、「米国の行動は中国の体制を標的にしたものであり、中国の人々に対するものではない」と強調した。
また、ポンペオ氏は別の声明で、中国が米国への報復措置として米国民に対するビザ(査証)の発給を制限すると警告していることに関し、「中国が自らの選択に対する責任を取ることを拒否するものだ」と批判し、「中国が香港住民や国際社会の信頼を回復したいのなら、中英共同宣言を尊重すべきだ」と訴えた。
ポンペオ氏は6月26日、香港の「高度な自治」を侵害した疑いのある中国共産党体制の現職および退官した複数の当局者に対し、ビザの発給を制限する制裁を科すと発表していた。
議会でも対中圧力強化の機運は高まっている。
与党・共和党のコットン上院議員は6月29日の声明で「香港の自由を圧殺した習近平(国家主席)と配下の共産党の悪党は報いを受けるべきだ」とした上で、上院が25日に可決した「香港自治法案」を下院も通過させるよう呼びかけた。
同法案は香港の自治の制限に関与した個人や組織、金融機関に制裁を科すことを定めており、下院での可決とトランプ氏の署名を経て成立する公算が大きい。
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2020-06-30 10:15:00Z
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