【カイロ=久門武史、ワシントン=中村亮】イスラエル軍は14日、イスラム原理主義組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザに地上からの砲撃を開始した。地上侵攻も排除しておらず緊張が高まっている。バイデン米政権は事態の沈静化へ向けた有効な手立てを打てず、中東政策の見直しを強いられる可能性もある。
イスラエル軍は14日、領内から戦車や砲兵などがガザを攻撃し、ハマスが築いた地下トンネル網を破壊したと表明した。地上侵攻に至れば、ハマスとの間で大規模な戦闘になった2014年以来7年ぶりとなる。当時はイスラエル人少年の誘拐殺害事件を発端に対立が激化し、約50日の戦闘で計2千人以上が死亡した。
今回の交戦は、聖地エルサレムで4月中旬から相次ぎ今月7日に激化したパレスチナ人とイスラエル警察の衝突が発端になった。10日にハマスがロケット弾を発射し、イスラエル軍が空爆する報復合戦に陥った。パレスチナ、イスラエル双方で死者は計120人を超えた。
イスラエル軍が攻勢を強めたのは、バイデン米大統領が13日、ガザ空爆について「著しい過剰反応ではない」と記者団に述べた直後だった。これまでの空爆は自衛権行使の範囲内だとお墨付きを与えたとされる発言だ。
バイデン政権はイスラエルを擁護しつつ自制を促してきた。しかしイスラエルは攻撃の手を緩めず、米国の働きかけは効果が見えない。国連安全保障理事会は12日、事態の沈静化に向け協議したが、一致した対応をとれなかった。米国が「緊張緩和につながらない」と反対したためだ。
バイデン政権発足で米国の対イスラエル、パレスチナ政策は大きく変化した。過度にイスラエルに肩入れしたトランプ前政権からの軌道修正を図るとともに、前政権が離脱したイラン核合意への復帰を目指している。このためイスラエルは米国への不信を強めている。資金支援などで関係改善を目指すパレスチナからの信頼回復も道半ばだ。
イスラエルとハマスの戦闘が長引き犠牲が膨らめば、中東から手を引こうとするバイデン政権の政策にも影を落とす。三菱総合研究所の中川浩一主席研究員は「バイデン政権は再び中東に関与せざるを得なくなる。イラン核合意への復帰交渉も仕切り直しを迫られる」と指摘する。
ガザ問題の沈静化のため米国がイスラエルの主張に配慮する必要が強まれば、イスラエルが猛反発する核合意への復帰交渉はハードルが上がる。イラン国内でも米国を敵視する強硬派の勢力が強まる恐れがあり、交渉はさらに見通せなくなる。
アラブ諸国はイスラエルの強硬姿勢を一斉に批判している。昨年、イスラエルと国交を樹立したアラブ首長国連邦(UAE)なども国内の反イスラエル感情の高まりを警戒せざるを得ない。前米政権下で進んだ中東地域の融和ムードに冷水を浴びせている。
国連安保理はイスラエルとハマスの衝突をめぐり、16日に初めての公開会合を開くと決めた。国際社会の停戦調停は難航しており、エジプトやカタールが仲介に乗り出したが進展は伝えられていない。
こうしたなか、戦線はイスラエル北部にも拡大する懸念が出ている。イスラエル軍によると13日、レバノン南部からイスラエル沖の地中海にロケット弾3発が撃ち込まれた。ハマスとつながりのある武装勢力が発射した可能性がある。事態の沈静化は見通せない状況が続いている。
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2021-05-14 14:17:18Z
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