「バイデンが勝ったらどうなるか? この国は終わりだ」――。
11月3日の米大統領選が迫ってきた。前回2016年の選挙でドナルド・トランプ氏(74)を大統領に押し上げたのは、中西部から北東部の「ラストベルト(さびついた工業地帯)」に暮らす白人労働者など既存政治から忘れ去られた人々の怒りだった。世論調査の支持率では民主党候補のジョー・バイデン前副大統領(77)がリードするが、彼らの怒りは今もマグマのように燃えている。米国社会の分断が一層深まる中、焦点は既に「大統領選後に一体何が起きるのか」に移っている。
「そうです。ここが次の大統領、ジョー・バイデンが少年時代を過ごした家です。10歳までここに住んでいました。写真撮影はご自由に。そして、ジョーへの投票も忘れずに!」
ペンシルベニア州スクラントンのバイデン氏の生家は、閑静な住宅街にある。白いペンキ塗りの壁と、芝生がきれいに刈られた前庭。米国の一般的なたたずまいの住宅だ。玄関に続く柵には一枚の張り紙があり、幼少時のバイデン氏が前庭で野球に興じる写真とともに、投票を呼びかけるメッセージが添えられていた。
辺りを見回すと、向かいの家にも「スクラントンはジョーを愛している」と書かれたヤードサイン(立て看板)が芝生に刺さっている。バイデン氏は今は東部デラウェア州に暮らすが、生家があるお膝元のスクラントンでは、バイデン氏を支持するヤードサインをよく見かける。少なくともバイデン氏の生家の周りでは。
そんなスクラントンの郊外で、トランプ氏の再選を訴えて活動する男性がいる。そこから10分ほど車を走らせた住宅街に暮らすデーブ・ミチコさん(53)。彼がトランプ陣営の招待で、自宅近くで行われた選挙集会に参加したのは8月20日のことだった。着慣れないスーツだったが、「トランプ色」の赤いネクタイを選んだ。会場でトランプ氏はこう演説した。「(バイデン氏は)地元を捨て、雇用を外国に流出させた。ここは民主党のエリアだったが、私への支持は急上昇している。感謝している」
「陣営のえらい人とも会えて、私なんてVIP扱いさ。光栄だったね」。自宅のガレージに置いたアウトドアチェアにもたれながら、ミチコさんは目を細めた。
ミチコさんが集会に招待されたのは、トランプ…
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2020-10-20 22:01:14Z
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