国連本部で会見するポンペオ米国務長官(20日、ニューヨーク)
【ニューヨーク=吉田圭織】ポンペオ米国務長官は20日、ニューヨークの国連本部で会見し、安全保障理事会に対して「イランに対する国連制裁の復活(スナップバック)手続きを開始すると通知した」と発表した。一方、イランとの核合意を維持する英国、フランス、ドイツは「合意から離脱した米国に制裁復活手続きをする権利はない」と主張、実際に制裁が復活するかどうかは不透明だ。
ポンペオ氏は「一方的で愚かな核合意は米国の安全保障や中東の安定につながらなかった」と指摘し、制裁復活が必要だと強調した。米国はこのほど、安保理に10月に期限が切れる対イランの武器禁輸措置を無期限に延長する決議を提出したが、採択に必要な賛成票が得られず、失敗した。このため、制裁復活以外の選択肢がなかったとしている。
イラン核合意を承認した2015年の安保理決議では、合意参加国が制裁復活手続きを通知し、30日以内にこれに対抗する安保理決議が採択されなければ31日後に核合意前の国連制裁が全て復活する規定が含まれている。
制裁が復活すれば、対イラン武器禁輸も再発動となり、核・弾道ミサイル開発なども禁じられる。制裁復活を止めるための安保理決議を巡っては、米国が拒否権を発動し否決に追い込むのが確実だ。
米トランプ政権は18年にイラン核合意を離脱した。ただ、ポンペオ氏らは15年の安保理決議に米国が合意参加国として明記されているため、離脱後も手続きを始める権利があると主張している。
一方、米国には制裁復活手続きを発動する権限はないと考える国は多い。米国の発表を受け、英国、フランス、ドイツは「米国は18年に合意離脱した。したがって、(米国による)行動は支持できない」との共同声明を発表した。ロシアのネベンジャ国連大使は記者団に対し「米国は合意の参加国ではないため、(通知を)スナップバックとして認識しない」と述べた。
イランのラバンチ国連大使も20日、米国の制裁復活手続きは「法的かつ政治的ないじめだ」と反発し、「米国も自らスナップバックをする権利はないと過去2年間述べてきた」と指摘した。
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2020-08-20 22:05:24Z
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