エスパー米国防長官は対中包囲網の形成を講演で呼びかけた=AP
【北京=羽田野主、ワシントン=永沢毅】南シナ海を舞台に米中の緊張がかつてなく高まっている。中国が26日に弾道ミサイルの発射実験をすると、米国は南シナ海の軍事拠点化を進めた中国企業・個人への初の制裁に踏み切った。双方の応酬は偶発的な衝突リスクを増し、不測の事態を招きかねない。
複数の米メディアによると、中国が26日に南シナ海に向けて発射した弾道ミサイルは4発だった。西沙(英語名パラセル)諸島と海南島に挟まれた航行禁止海域に着弾したとみられる。
米領グアムも射程に入れる「DF26」や、米空母の攻撃に適した対艦ミサイル「DF21D」だったという。いずれも米国への強い対抗意識が読み取れる。
金沢工業大の伊藤俊幸教授(元海将)は「中国が南シナ海に中距離ミサイルを発射したのはハワイ沖で実施中の米海軍主催の環太平洋合同演習『リムパック』に対抗する演習の一環だ」とみる。
伊藤氏は「空母キラー」とも呼ばれるDF21Dの発射は「空母をいつでも攻撃できるという米国へのメッセージだといえる。南シナ海などに米軍艦艇を寄せつけない『接近阻止・領域拒否(A2AD)』戦略の象徴として撃ったのではないか」と分析する。
中国は2019年夏に南シナ海で初めてミサイル発射実験を実施し、その後も精度向上を図っているとみられる。
中国国防省の呉謙報道官は27日の記者会見で「米国の一部の政治屋が11月の米大統領選の前に自分の利益のために中米関係を破壊しようとしている」と主張した。中国批判を強めるトランプ米政権のポンペオ国務長官やエスパー国防長官らを念頭に置いているとみられる。
中国共産党系メディアの環球時報(英語版)は27日、ミサイル発射を巡って「米軍の危険な行動に明確なメッセージを送った」との中国軍事関係者のコメントを伝えた。25日の米軍U2偵察機による飛行禁止区域への進入に対する対抗措置だった可能性を示唆したものだ。
中国のミサイル発射に米側も警戒を強める。「中国人民解放軍の近代化で、南シナ海や東シナ海での挑発行為に間違いなく拍車がかかる」。エスパー米国防長官は26日、ハワイでの講演でこう警告。「同盟国との強固なネットワークで中国という競争相手に優位を保ってきた。それをさらに拡大する」と、中国の脅威に対抗する包囲網の構築を改めて提唱した。
米中の軍事的緊張が高まるのは初めてではない。台湾での初の総統直接選挙を受けた1996年3月、中国は台湾海峡の近海でのミサイル演習で威嚇した。クリントン米政権が台湾海峡に空母2隻を派遣すると、中国はそれ以上の示威行為に動くのをやめた。
当時は米軍優位が圧倒的だったためだが、四半世紀を経て状況は様変わりした。中国は49年までに軍を「世界レベル」にする目標を掲げ、19年末には国産空母を就航させるなど近代化を進める。「中国は戦争を除くあらゆるシナリオで南シナ海での事態をコントロールできる力を備えている」。インド太平洋軍のデービッドソン司令官は危機感を強める。
明海大の小谷哲男教授は「米中両国が互いに南シナ海でけん制し合う動きは続くだろう。双方とも軍事的な衝突は望んでいない。これで急激に局面が変わるわけではない」とみる。
それでも南シナ海で米中両軍は1日あたり数回遭遇し、年間では数千回に及ぶとの指摘もある。「米国との衝突は望まないが、挑発をされて黙っているのにも限界がある」(中国の軍事関係筋)。偶発的な衝突リスクは高まっている。週末には日米防衛相会談が予定されているが、南シナ海問題で緊密な連携を示す重要性が増している。
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2020-08-27 11:14:28Z
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