エルドアン氏が首相に就任したのは2003年。就任後の最初の6年間で国民1人あたりのGDPがおよそ3倍となるなど、めざましい経済発展を遂げました。外交面では、国連とともにロシアとウクライナの仲介役となり、ウクライナ侵攻で滞った農産物の輸出の再開にこぎ着けるなど、存在感を内外に示しました。
一方、トルコ国内では、2016年のクーデター未遂などを経て反対派の締めつけを強化します。2018年には国民投票を経て、強大な権力が大統領に集中する実権型の大統領制に移行しました。
国内外からエルドアン大統領の強権化を批判する声があがるなか、トルコで暮らす若者たちの中には、閉塞感を募らせる人もいます。中部トカットに住むエレンさん(21)は、エルドアン政権の強権的な姿勢が、自分の将来を阻んでいると感じています。当局などから不当な扱いを受ける恐れがあるとして、顔を出さないことを条件に取材に応じました。
3年前、カナダに留学しようと、大学の入学許可を得て、留学ビザの申請をしましたが、カナダ大使館にビザの発給を拒否されました。エレンさんは「大使館は私が難民になると思ったようです。観光ではなく留学で、大学の入学許可は出ていたのでまったくの想定外でした」と話しています。
エレンさんのケースは決して珍しいものではありません。トルコからヨーロッパ各国へのビザ申請のうち、拒否された割合はおととしは19%と、申請の5件に1件近くが拒否されていて、トルコ政府も「意図的なものだ」として不快感を示しています。エレンさんは、エルドアン大統領の締めつけを嫌った多くの人々がトルコから欧米に渡り、難民申請を行っていることが、自分のビザの審査に影響したのではないかと考えています。ただエレンさんの感じる閉塞感は、上の世代には伝わりません。
祖父のシャハプさん(72)は熱烈なエルドアン支持者で、政治の話では、意見は相いれないと言います。エレンさんが、エルドアン政権の直近の4年間について経済の面や反対派への取り締まりなどで状況が悪化したと批判したのに対して、シャハプさんは、エルドアン政権が当初経済を立て直したことを、今も評価していて、再選を疑っていません。しかし、物心ついたときからエルドアン政権しか知らないエレンさんは、変化を求めています。エレンさんはエルドアン氏の政策を薬にたとえ「薬には副作用があります。薬自体は体によくても、副作用があって、私はその犠牲になりました」と訴えます。強権的と批判される政権運営を続けてきたことで、若者の間では不満が高まっています。
こうした若者の不満を取り込もうとしているのが野党6党の統一候補クルチダルオール氏です。有権者のおよそ8%にあたる500万人ほどが今回初めて投票権を得た若者で、選挙では、若者の票が選挙の結果を左右するとも指摘されています。今月9日、北西部サカルヤで演説したクルチダルオール氏は会場に集まった若者たちに「『トルコで、はびこった権威主義政府を若者が変えた』と歴史に残るでしょう。ひとりのことばですべてが決まる政治ではいけない」と訴えかけました。
野党の選挙集会に参加した若者からは「専制主義になり、誰も自由に話すことができない。政権はかなり圧力をかけてくる」とか「女性はヨーロッパのような権利がなく、抑圧されている」などとして政権交代を求める声が聞かれました。独自の外交で存在感を示してきたエルドアン大統領と、権威主義の打破を掲げるクルチダルオール氏のどちらが選ばれるのか、国際情勢にも影響を与えるだけにその行方が注目されます。
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2023-05-14 07:21:31Z
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