河野太郎防衛相は18日の日中防衛相会談で、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での領海侵入など軍事的挑発行為の自制を求めた。
来春の習近平国家主席の国賓来日を控え、日中両国は友好モードを強調している中、安全保障上の懸念解消が先だとの姿勢を強調した形だ。
会談の冒頭、中国の魏鳳和国務委員兼国防相は10年ぶりの防衛相訪中を「防衛関係の改善と強化について非常に意義がある」と歓迎し、融和を強調した。
ところが河野氏は「お目にかかれてうれしい」と述べるとすぐに「各種の懸念が存在している」とクギを刺し、尖閣諸島周辺での中国側の動きに言及した。
今回の訪中は、前任の岩屋毅防衛相(当時)と魏氏との合意によるもので、河野氏は現況での訪問に積極的ではなかった。合意通りに訪中を実現させたかったのは中国側だった。
安倍晋三首相と習氏は昨年10月の会談で「競争から協調」の日中関係を確認し、防衛交流は過去になく進んでいる。海上自衛隊は今年4月、中国での国際観艦式に護衛艦を派遣。中国海軍は返礼として、10月に駆逐艦を横須賀に入港させ、海自と共同で親善訓練を行った。中国軍艦の日本来港は10年ぶりだ。
しかし、その裏で中国は軍事的挑発を止めようとしない。訪中当日の18日も、尖閣諸島周辺の領海外側の接続水域を中国当局の船が航行した。航行は10日連続となる。今年の接続水域航行は延べ1千隻を超え、過去最多だ。このうち領海に侵入したのは約120隻を数える。7月にはロシアの爆撃機と編隊を組み、竹島(島根県隠岐の島町)や尖閣諸島に接近した。
浜田靖一防衛相(当時)が訪中した10年前と比べ、中国の脅威は格段に増した。軍事予算は公表されているだけで約2・5倍に膨らみ、2012年には初の空母を就役させた。
こうした厳しい現状を踏まえ、河野氏は会談で「懸念について率直に議論すると同時に、今後の交流の進め方についても意見交換したい」とし、自制と関係改善が「セット」であるとの認識を示した。
安倍政権が「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」と関係改善に向かってきた中、自民党の国防族議員は「官邸や外務省が言いにくいことを河野氏は主張したのだろう」と語った。(北京 田中一世)
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2019-12-18 11:28:00Z
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