<訴追理由に「ロシア疑惑」や「収賄」も入れるべきだったという声があるが......。下院本会議で可決されれば、米史上3回目となる弾劾裁判が年明け早々にも開廷する>
米下院司法委員会はドナルド・トランプ米大統領のウクライナ疑惑をめぐる弾劾訴追条項案を起草し、12月13日にこれを可決した。一方、下院を率いる民主党が起訴理由に相当する「弾劾訴追条項」を2つに絞ったことには、反トランプ派から疑問視する声が上がっていた。トランプの数々の行動を考えればより多くの罪に問えただろうし、弾劾手続きにもっと長時間かけることもできたはず、と。
だが、ナンシー・ペロシ下院議長のやり方は正しかった。2つの訴追条項は簡潔で、しかも当を得ている。
1つ目の弾劾条項としたのは、トランプがウクライナに対し、来年の大統領選で政敵となる民主党のジョー・バイデン前副大統領を調査するよう圧力をかける目的で、軍事支援とウクライナ大統領との首脳会談を保留にしたという「権力乱用」だ。もう1つは、議会が弾劾調査に関わる書類の提出や関係者の議会証言を求めた際、それらを無視するよう部下に命じたという「議会妨害」である。
しかし、弾劾事項を2つに絞ったことに対し、訴追理由に「ロシア疑惑」も含めるべきだった、との声が上がった。
確かに弾劾訴追条項案は、ロシア疑惑の調査結果である「ムラー報告書」に直接的には触れていない。だが、トランプが2016年の大統領選で対立候補のヒラリー・クリントン元国務長官のメールをリークするようロシアに教唆し、また最近、中国政府に対してバイデンの汚職を調べるべきと発言したことを、ウクライナ疑惑に結び付けてはいる。「これらは、大統領選において外国政府の介入を招いたというトランプ大統領の過去の行動と一貫性がある」と、条項では指摘する。
年明け早々に幕が開く
ムラー報告書には弾劾訴追に有利に働き得る内容も含まれてはいたが、ロシア疑惑でトランプを追い詰めようという政治的機運はついに実を結ぶことなく終わった。
民主党は、ロシア疑惑という「過去の話」を蒸し返すことで弾劾訴追への賛成票をいくつか失うこともあり得ただろう。現に民主党内の穏健派勢力はたった2つの弾劾理由にさえ及び腰だ。これ以上の弾劾理由を並べれば、さらなる反発を招いた可能性がある。
次に、弾劾理由に「収賄」を入れるべきだったという声も噴出した。背景には、合衆国憲法が、大統領を弾劾する理由として「反逆罪、収賄罪または重罪や軽罪」と明示していることがある。しかし「収賄」を含めれば、トランプが「恐喝」したか否かなど新たな争点を生み、弾劾訴追の反対派に追及する隙を与える結果となっただろう。
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2019-12-16 08:05:00Z
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