[シドニー/カトマンズ 28日 ロイター] - 新型コロナウイルス渦で閉じた国境をオーストラリアが再開したことをきっかけに、国民の幸福度が高いことで知られるブータンから同国に渡る学生が急増している。若者の失業率が2桁に上昇するなど、国内で経済面の「不幸度」が高まっているためだ。
ブータンからオーストラリアにやって来た学生は5月までの11カ月間だけで1万2000人を突破。これはブータンの総人口の約1.5%に当たる。最近の渡航組の大半は西オーストラリア州のパースに落ち着き、保育やホスピタリティー、会計などを専攻する課程に進んでいる。
昨年オーストラリアにやってきた教育コンサルタントのタシ・キプチュさん(25)もその1人。西オーストラリア大学でマーケティングを学んだが、ブータンは「コロナ後に全てが死に絶えた。チャンスがない」という。
ブータンからオーストラリアへの移住は、少数の人道的な受け入れを除けば、かつてはごくわずかだった。しかし2017年にブータンからやって来る学生が増え始め、22年にオーストラリアが国境を再開すると、こうした動きが加速。公式統計によると、ブータンからの学生ビザ申請件数は今年6月末までの会計年度に5倍に膨らんだ。
短期間に学生が大量に流入したことで、オーストラリアには南アジア以外で最大規模のブータン人コミュニティーが出来上がった。
オーストラリアの留学生は60万人で、うちブータン人はほんの一握り。一方、400億豪ドル(約3兆8000億円)規模の豪教育産業は、パンデミック時の留学生不足で失われたビジネスを取り戻そうとしているが、特に主要市場である中国からの留学生は復帰のペースが期待されたよりも遅い。
オーストラリア国際教育協会のフィル・ハニーウッド最高責任者は、「オーストラリアの大学は多様化に熱心。前政権と現政権から中国、インド、ネパールだけに頼りすぎてはいけないというメッセージを受け取っている」と話す。「大学は新しい国を開拓し、新しい教育エージェントを見つける必要がある」と語る。
2021年にブータンの駐オーストラリア大使に就いたソナム・トブゲイ氏はオーストラリアの魅力として、比較的安価な授業料に加え、ビザ制度で学生の扶養家族も滞在できる上、時間制限なく就労できるなど留学生に有利な点を挙げた。
ブータンの現閣僚10人のうち6人がオーストラリアの大学や研究所で学位を取得している。
ブータンは余暇や環境などを含めた心の充実度を測る「国民総幸福量(GNH)」を重視していることで知られる。しかし、経済は非常に閉鎖的で、専ら水力発電と観光業に依存している。最近はエネルギー価格の高騰が直撃し、外貨準備高が急減した。
さらに労働市場で最大の公務員部門の合理化と近代化を目的とした政府の公共部門改革も、専門職大量流出の一因となっている。
インドと中国に挟まれたブータンは昨年9月に国境を再開した。だが、観光税の引き上げが重要産業である観光業の回復に水を差しており、若者の失業率は昨年28%に達した。
自国の雇用見通しが暗い中、多くの若者がオーストラリアに殺到。オーストラリアは、過去50年間で最も逼迫した労働市場の需給を和らげようとビザの規制を見直した。
ブータンで化学技術者として技能を身に着けたキプチュさんは、パース到着後まもなくビジネスチャンスを見出し、ブータンからの留学希望者を支援する教育コンサルティング会社を立ち上げた。今では母国で40―50人を雇用している。
「勉強するためにオーストラリアに来たけれど、どういうわけかこの国が私にチャンスを与えてくれた」と振り返る。「就労機会と、学生が働ける柔軟性が、オーストラリアをより魅力的な国にしている」という。
西オーストラリア州で職業教育を提供しているキングストン・インターナショナル・カレッジでは、ブータン人の学生約150人が訓練を受けている。学生数はパンデミック前のわずか15―20人から大幅に増加した。
同カレッジのマネジングディレクターで自身もブータンからの移住者であるタンジン・ドルジさんはこうした動きについて、「文化的なトレンドになっている。ブータン人は誰かが実際に成功しているのを見れば、そこに向かう」と話した。
(Stella Qiu記者、Gopal Sharma記者)
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2023-07-31 23:20:00Z
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