Rabu, 10 November 2021

米中が気候変動で共同宣言 協調演出、目標上積みせず(写真=AP) - 日本経済新聞

【ブリュッセル=竹内康雄】米中両政府は10日、温暖化ガスの一種であるメタンや石炭削減、森林保護など気候変動対策での協力策を盛り込んだ共同宣言を発表した。米中は人権など多くの分野で対立を深めるが、気候変動では協調する姿勢を示したものだ。ただ、両国とも削減目標の上積みを見送るなど具体策は乏しい。

英グラスゴーで開催中の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)でケリー米大統領特使(気候変動問題担当)と中国の解振華担当特使が会談して発表した。米中合計の温暖化ガス排出は世界の4割超を占める。両国が世界の気候変動対策の実効性を左右する。

ケリー氏は記者会見で「この合意はCOP26を成功させるための支持表明だ」と訴えた。AFP通信によると、解氏が記者団に「(米中とも)現在の取り組みと(温暖化対策の国際枠組みである)パリ協定の目標にはギャップがあると認識している」と語った。

宣言は米中が2020年代の今後10年間で「気候変動の危機に取り組むことを約束する」と表明。現在の排出削減努力とパリ協定の目標達成の「ギャップを埋めるために協力を強化し、対策を加速させる」と明記した。

具体的には、メタンの排出を減らす計画を22年のCOP27までにつくることを検討する。再生可能エネルギーや省エネでの協力を深めるほか、違法な森林破壊を阻止するための支援でも協調する。中国は石炭の消費を減らすとも明記した。

両国が35年の排出削減目標を25年に国連に提出することも確認した。20年代の温暖化防止に向けた行動を強化する作業部会も設ける。温暖化の責任は途上国より先進国が大きいとする「共通だが差異ある責任」の原則にも触れ、米国が中国に一定の配慮を示した。

宣言は数値目標が乏しく、米中の政治的なメッセージの意味合いが強い。温暖化ガス排出を実質ゼロにする時期は日米欧は50年だが、中国は60年。米国は中国に目標前倒しを求めているが、中国は今回も応じなかった。

米バイデン政権は支持率が低下し、気候変動での成果を焦る。中国は人権問題などで国際社会から孤立し、気候変動での協力をちらつかせて米欧との関係をつなぎ留めたい。宣言は米中の思惑が奇妙に一致した妥協の産物といえる。

COP26は12日までで交渉は大詰めだ。今回の合意がCOP26を成功に導くか注目される。

欧州連合(EU)のティメルマンス上級副委員長(気候変動担当)はツイッターに「2大排出国の協力はCOP26での交渉を後押しするだろう。今こそ、世界の合意を見いださねばならない」と投稿した。国連のグテレス事務総長は「正しい方向への重要な一歩だ」と歓迎した。

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2021-11-10 23:30:39Z
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