【ワシントン=中村亮】バイデン米大統領は3日、悪質なセクハラ行為をしたと批判されている民主党のクオモ・ニューヨーク州知事に辞任を求めた。クオモ氏は長年の盟友だが、擁護すれば来年秋の中間選挙で重要な女性票の離反を招くと懸念したとみられる。穏健派のクオモ氏の影響力の低下で、民主党内で同氏のセクハラを批判していたリベラル派の勢いが増す可能性がある。
「クオモ氏が複数の女性を不適切に触ったり、無理やりキスしたり抱きしめたりした」。ニューヨーク州のジェームズ司法長官は3日の記者会見で、5カ月にわたった特別検察官の調査結果を公表し、クオモ氏が複数の女性に性的な不法行為を重ねていたと報告した。セクハラを告発しようとした女性に報復する例もあったという。
クオモ氏は同日、事前収録した動画を公開し「誰に対しても不適切に触ったり、性的に誘ったりしたことは一切ない」と述べ、セクハラを否定した。ただ、バイデン氏は3日、ホワイトハウスで記者団に対し、「私は3月に州司法長官が調査を通じて（セクハラ疑惑が）正しいと結論づければ辞任を勧めると述べた」と指摘。「それをきょう実行している」と語り、クオモ氏に辞任を迫った。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、同州の民主党幹部は3日の声明で「クオモ氏が州民主党の過半数の支持を失い、知事職にもはやとどまることはできないことは極めて明白だと思う」と指摘した。クオモ氏が辞任を拒んでも州議会に弾劾されて辞職に追い込まれる可能性が高まっている。
クオモ氏は2011年からニューヨーク州知事を務め、全米で知名度が高い。民主党穏健派のバイデン氏やペロシ下院議長、上院トップのシューマー院内総務らに近い。バイデン氏と長年の付き合いがあり、米メディアによると18年の州知事選でバイデン氏がクオモ氏を応援し、20年の大統領選に向けた民主党予備選ではクオモ氏がバイデン氏を支持していた。
バイデン氏が盟友のクオモ氏を見切ったのは、政権運営へのダメージを抑えるためだ。バイデン氏は政権発足から女性層の支持固めを目指し、閣僚級ポストに政権1期目で過去最多の11人の女性を起用していた。女性の人工妊娠中絶の権利を認めた1973年の連邦最高裁判所の判決への支持も打ち出している。
米ギャラップの7月の調査によるとバイデン氏の支持率は50%だが、女性に限ると60%にのぼる。20年の大統領選でも新型コロナウイルス対策を最優先課題と位置づける穏健な女性層がバイデン氏支持に回り、当選に結びついたとの見方が多かった。新型コロナの再拡大で支持率が下がり始めたなかで、女性票の重みは増している。
早期の辞任要求は共和党からの批判を避ける狙いもある。マクダニエル共和党全国委員長は3日、バイデン氏による辞任要求に先立って「クオモ氏による複数の女性に対するセクハラが証明された。バイデン氏は辞任を求めるべきだ」とツイッターに書きこんでいた。後手に回るほど政権への批判が強まるのは必至だった。
穏健派のクオモ氏のセクハラ行為の認定を受け、民主党のリベラル派が勢いづく公算が大きい。民主党のオカシオコルテス下院議員は3日、記者団に対し「疑惑が出たときから（辞任を）主張してきた」と述べた。3月ごろにセクハラ疑惑が浮上するとまずリベラル派を中心に辞任要求が広がったが、バイデン氏やペロシ氏は態度を明確にしなかった。民主党内の穏健派が守勢に追い込まれれば、今後の予算や法案の策定過程にも影響が出る可能性がある。
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2021-08-04 08:26:02Z
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