【ワシントン=中村亮】米軍は30日、アフガニスタンからの撤収を完了したと発表した。約20年間にわたって掃討をめざしたイスラム主義組織タリバンが復権し、米史上最長の戦争は敗走に近い形で幕を閉じた。国際テロ組織がアフガンを拠点に米国本土を再び攻撃するリスクは消えていない。
米軍で中東地域を管轄するマッケンジー中央軍司令官が30日の記者会見で撤収完了を発表した。米兵を乗せた最後の輸送機C17は米東部時間30日午後3時29分(日本時間31日午前4時29分)にアフガンの首都カブールを飛び立った。マッケンジー氏は「軍事的な局面は終わった。外交に移る」と語り、アフガン安定を外交に託すと強調した。
バイデン米大統領は4月、約2500人のアフガン駐留部隊を撤収させると表明した。タリバンが8月中旬にカブールを制圧すると、恐怖政治が復活するリスクが浮上。部隊を5800人規模に増やして米国人に加え、アフガン戦争で米国に協力したアフガン人の国外退避を8月末まで進めると説明してきた。欧州や日本も自国民らを退避させた。
バイデン氏は泥沼の戦争を批判的にみる世論に配慮してアフガン撤収を貫いた。2001年の開戦直後はテロとの戦いを米国民の大半が支持したが、巨額の戦費や米兵の犠牲を伴う戦争に一般国民は恩恵を感じず熱気は冷めていった。バイデン氏が副大統領を務めたオバマ政権は16年末までの撤収を目指したが、治安悪化を受けて断念していた。
タリバン復権でアフガン民主化の取り組みは失敗に終わった。アフガン戦争を通じて根付きつつあった女性の権利や報道の自由が後退する可能性が高まっている。バイデン氏は軍事力を通じて「国家建設に関与しない」と繰り返し主張しているが、民主主義や人権を重視する外交方針に逆行する。
国際テロ組織の監視が難しくなる公算も大きい。オースティン米国防長官は6月中旬の議会公聴会で、国際テロ組織アルカイダなどが2年以内に米本土への脅威になる恐れがあると証言した。米軍はタリバン復権でこの時期が前倒しになると警戒する。8月下旬には過激派組織「イスラム国」(IS)系勢力が米軍を標的に自爆テロを実行。過激派が勢いづいて、米欧でテロを起こすリスクがくすぶっている。
アフガン戦争は01年9月の米同時テロをきっかけに始まった。アフガンを拠点とするアルカイダがハイジャックした民間機をニューヨークの世界貿易センタービルに衝突させた様子は世界に大きな衝撃を与えた。
当時のタリバン政権はテロの首謀者であるアルカイダのウサマ・ビンラディン容疑者の引き渡しを拒否。ブッシュ政権(第43代)はテロとの戦いを宣言した。北大西洋条約機構(NATO)は北大西洋条約第5条が定める集団的自衛権を史上初めて行使し、米国を支持した。
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2021-08-30 20:46:00Z
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