<全米各地の抗議デモの現場に武装して表れる過激な極右勢力ブーガルー。デモの最中に起きた銃撃事件とも関連が疑われる>
ウィスコンシン州ケノーシャで8月25日深夜、黒人差別反対デモの最中に銃撃があり、2人が死亡する事件が起きた。撃ったのは17歳白人のカイル・リッテンハウスで、殺人容疑で逮捕されたが、動機や背景はまだ明らかになっていない。
だが、極右を中心とする過激な「ブーガルーboogaloo」運動の信奉者ライアン・バルチが、事件当日リッテンハウスと会っていたことをシカゴ・サンタイムズ紙に明かしたところから、全米で悪名を馳せるブーガルーと事件の関連が脚光を浴びている。
バルチはウィスコンシン州ウェストベンドに住む退役陸軍軍人。リッテンハウスはブーガルー運動と「まったく関係ない」とバルチは言ったが、銃撃が起きた日、ケノーシャ市内に32人ものブーガルー信奉者がいたことを明らかにした
ワシントン・ポスト紙の報道によれば、その夜、ブーガルーのバッジを身に着けた男性が数人、目撃されている。
バルチは本誌に、マスコミはブーガルー信奉者を「無関係の群衆」と一緒くたにしている、と文句を言った。
ブーガルーとは何か。ユダヤ系団体の名誉毀損防止連盟(ADL)によれば、もともとは内戦を意味する俗語だが、それを白人至上主義者や極右過激派が、社会転換をもたらすための内戦を表す言葉として使い始めた。
この言葉は同時に「集団暴力を気軽に受け入れる」姿勢を指しており、一部のブーガルー支持者の間では、暴力行為に参加する「意欲の高まり」を意味することもあるという。
人種は関係ない
しかし、サンタイムズあてのメッセージの中でみずから「ブーガルー信奉者」と称したバルチは、極右勢力と、ブーガルー運動の使命には違いがあると語る。
「われわれは、争いが起きないようにしながら、抗議をする人々を必要に応じて助けることができるように、参加しているだけだ」と、本誌へのメッセージでバルチは述べた。
サンタイムズ紙には「ブーガルー信奉者」の間には、内戦が「目前に迫っている」という「一般的なコンセンサス」があると語っていたバルチだが、ブーガルーにとってその戦いは、人種とは関係がないという。
「ブーガルーの少年たちは極端なリバタリアン(自由主義)と無政府主義の理想にこだわる傾向があるので、人種は私たちにとって問題ではない」と、バルチは本誌に語った。「様々な人種や宗教の少年がブーガルーを信奉している」
25日のデモの場に足を運んだブーガルーのメンバー32人はみな、自分と「同じイデオロギーを共有していた」とバルチは言う。極右に共感してブーガルー運動に参加しようとした人々は「権威主義的な理想を支持する傾向がある」。
「(極右のメンバーは)マスコミがブーガルー運動をたたき始めるとすぐに逃げ出して、ブーガルーの名を使わなくなった」と、バルチは語った。
<参考記事>アメリカで台頭する極左アンティファとは何か──増幅し合う極右と極左
<参考記事>孤独なオタクをのみ込む極右旋風
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2020-09-02 08:30:00Z
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