【ワシントン=永沢毅、ソウル=恩地洋介】北朝鮮が10日、短距離弾道ミサイルとみられる飛翔(ひしょう)体を再び発射した。7月25日以降で5回目で、米韓合同軍事演習の中止へ圧力を強めた。短距離ミサイル発射などを容認するトランプ米大統領の言動が、北朝鮮の挑発行為を助長している懸念がある。
韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮は10日午前5時半過ぎ、東部の咸興(ハムフン)付近から日本海へ2発を発射。飛行距離約400キロメートル、高度約48キロメートルだった。韓国大統領府は関係閣僚会議を招集し、米韓演習への示威行為と分析した。
発射のわずか約6時間前。トランプ氏は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長から8日に手紙を受け取り、同氏がその中で米韓合同軍事演習に不満を示したと明かした。そのうえで「私も好きではない。演習にカネを使いたくない」と同調してみせた。
今回の演習は5日に始まり、20日ごろまでを予定している。11日からは有事を想定して図上で作戦行動を再現する本格的な指揮所演習に入る。米国防総省は抑止力維持に演習は欠かせないとみているが、トランプ氏にとっては米軍の負担軽減が優先事項だ。米政府関係者は「トランプ氏の発言が北朝鮮の行動を助長させている」と危惧する。
北朝鮮によるいかなる弾道ミサイルの発射も国連安全保障理事会決議に違反するが、トランプ氏は短距離なら弾道ミサイル発射を容認する姿勢を示してきた。国内の有権者には米本土や米領グアムへの直接の脅威とはならないと主張できるためだ。2日には「国連(決議)違反かもしれないが、金正恩氏は信頼を損なって私を失望させたいと思っていない」とツイート。その後、北朝鮮は6日に短距離弾道ミサイルとみられる2発の飛翔体を発射した。
北朝鮮外務省報道官は6日の談話で、演習について「我々の再三の警告に耳を傾けないなら高い代価を払わせる」とけん制しており、少なくとも米韓演習が終わる20日ごろまでは挑発行為を続ける公算が大きい。韓国軍は「北朝鮮軍は夏季訓練中で、追加発射の可能性が高い」とみる。
7月25日と8月6日のミサイルについて北朝鮮は「新型戦術誘導弾」と呼び、通常の弾道ミサイルとは違って低空飛行で迎撃を回避する性能を備える。米国が発射を見過ごしているうちに北朝鮮はミサイルの精度を向上させ、韓国と日本への脅威は高まっている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48468160Q9A810C1EA3000/
2019-08-10 05:13:00Z
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