ロシア国営テレビの看板ニュース番組で生放送中に「戦争反対」のプラカードを掲げて拘束されたニュース編集者が15日、罰金3万ルーブル(約3万3000円)を科せられ釈放された。弁護士なしで14時間にわたる取り調べを受けたという。弁護士に伴われてモスクワ市内の裁判所を出たところで、報道陣に話した。
国営テレビ「チャンネル1」の編集者、マリナ・オフシャニコワさんは14日夜、ニュース番組の生放送中、原稿を読むアナウンサーの後ろで、「戦争反対。戦争止めろ。プロパガンダを信じないで。ここの人たちは皆さんにうそをついている」と書かれたプラカードを掲げ、「戦争反対! 戦争を止めて!」と声を上げた。
オフシャニコワさんは抗議後に拘束され、どこにいるのか担当弁護士も分からない状態がしばらく続いた。15日になり、アントン・ガシンスキー弁護士と共にモスクワ市内のオスタンキンスキー地方裁判所にいる様子の写真が、ソーシャルメディア「テレグラム」などで拡散された。
裁判所は、オフシャニコワさんのビデオ・メッセージに対して罰金3万ルーブルを科して、釈放した。
オフシャニコワさんは、無許可の公開イベントを開いた罪について、無実を主張した。
抗議行動前に投稿したビデオ・メッセージで、オフシャニコワさんは、ロシアによる侵略を批判し、その責任はプーチン大統領1人にあるとしたほか、「この狂気をすべて止める」力があるのはロシア国民だけだと主張。「何も怖がらないで。(政府は)私たち全員を刑務所に入れるわけにはいかない」と述べ、戦争に抗議するよう呼びかけていた。
オフシャニコワさんがテレビのニュース生放送中に反戦のプラカードを掲げたことについて、別に訴追されるのかは明らかになっていない。
長時間の取り調べ
ロシアのテレビは長く政府に統制されており、主要チャンネルで政府と異なる見解が放送されるのは以前から異例だった。そこに加えてウクライナ侵攻を受けて今月4日からは、政府が「特別軍事作戦」と呼ぶものを「侵攻」「侵略」と呼ぶことは禁止され、軍の行動について「偽情報」を拡散することは最高15年の禁錮刑で罰せられることになった。
このため、オフシャニコワさんがこの法律をもとに起訴され、厳罰を科せられるのではないかと懸念されていた。
弁護士に伴われ法廷を出たオフシャニコワさんは、集まった報道陣に、丸2日寝ていないので、今は休息が必要だと話した。
「取り調べは14時間以上続いた。家族や友人に連絡させてもらえず、弁護士への連絡も認められなかった」とオフシャニコワさんは述べた。
抗議行動については、自分ひとりで思いついたことだと強調した。
「自分で反戦を決意しました。自分自身で決めました。ロシアがこの侵略を始めたのが嫌なので。本当にひどいことです」と、オフシャニコワさんは英語で話した。
「皆さんにうそをついている」
ロシアで最も視聴者の多い国営テレビの看板ニュース番組「ヴレーミヤ」の生放送中に、オフシャニコワさんが反戦を訴えた映像は、たちまち世界中に広まった。
「戦争反対。戦争止めろ。プロパガンダを信じないで。ここの人たちは皆さんにうそをついている」と書かれたプラカードを掲げ、「戦争反対! 戦争を止めて!」と声を上げたその様子は、数秒間、放送された。
この前に公表していた動画で、オフシャニコワさんは自分の父親がウクライナ人で母親がロシア人なのだと語り、国営テレビのニュース担当としてて「テレビ画面からうそをつくことを、自分に許していたのが恥ずかしい。ロシア人をゾンビにしてしまった自分が、恥ずかしい」、「私たちはただ沈黙して、人道にもとるこの独裁政権を眺めていた」と述べた。
オフシャニコワさんはさらに、「同胞同士のこの戦争の恥を、私たちは10世代たってもすすぐことはできない」として、ロシア人とウクライナ人という同胞同士が殺し合う「この狂気を止められる」のはロシア国民だけだと、戦争に反対するよう呼びかけた。
同僚は驚き
生放送中に抗議したのがオフシャニコワさんだと判明すると、当人のフェイスブックのページにはたちまち、行動に感謝するコメントがウクライナ語、ロシア語、英語で次々と並んだ。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は15日夜の演説で、戦争に抗議し、戦争について真実を広めようとしているロシア国民に感謝し、オフシャニコワさんにも感謝の意を示した。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、フランス政府としてオフシャニコワさんを保護する意向を示し、プーチン大統領との次の電話会談で話題にするつもりだと述べた。
一方、ロシア政府のドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、オフシャニコワさんのしたことは「フーリガンの行動」だと批判した。
国営テレビの記者3人が辞任
ロシアのテレビニュースは政府に厳しく統制されている。ウクライナ侵攻を「戦争」「侵攻」と呼ぶことは禁止され、加害者はネオナチに支配されているウクライナの方だという主張を繰り返している。
国営メディアの職員が政府の公式見解と異なる意見を示すのは、きわめて異例。
しかし、ウクライナで戦争が始まって以来、少なくともジャーナリスト3人が国営テレビから辞任している。3人は、チャンネル1のザナ・アガラコワさんのほか、NTVのリリア・ギルデイエワさんとヴァディム・グルスカーさん。
ラジオ局「モスクワのこだま」やオンラインテレビ「ドシチ(TV Rain)」など、複数の独立系メディアは当局の圧力を受け、すでに放送を中止している。
ロシア政府のメディア監督機関「通信・IT・マスメディア監督サービス」は、BBCなど外国メディアが、「偽情報を含む内容を意図的かつ体系的に頒布(はんぷ)している」と非難している。
フェイスブックやツイッター、インスタグラムなどの人気ソーシャルメディアも利用が制限され、ロシア国内で得られる情報の多様性はさらに少なくなっているものの、多くのロシア人は通信制限を回避する方法を工夫している。
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2022-03-16 02:10:02Z
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