[サンパウロ/グラスゴー 3日 ロイター] - 英国北部グラスゴーで開催中の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)において、2030年までに森林破壊に終止符を打つことを宣言した国は100以上に及ぶ。その中でも特に大きな歓迎を受けた国が、ブラジルだ。
世界最大規模となるアマゾン川流域の熱帯雨林の60%がブラジルに存在しているから、というだけではない。2019年1月に極右のジャイル・ボルソナロ氏が大統領に就任して以来、ブラジル領アマゾンの破壊が急速に進行しているためだ。
「2030年までに森林破壊停止」という目標の達成を目指すのであれば、ブラジルの参加は不可欠だ。だからこそ、米国で気候変動問題を担当するジョン・ケリー大統領特使は、ブラジルの環境担当大臣が11月1日、COP26の席上で2年前倒しとなる2028年までに違法な森林破壊を止めさせるという野心的計画を発表したことを称賛した。
「今後の協力が楽しみだ」とケリー氏はツイッターに投稿した。
だが、科学者や非営利団体(NPO)関係者、先住民グループは懐疑的だ。
<「環境対策のリーダー」、復権は程遠く>
「この3年間、森林破壊は進む一方だ」。ブラジルの国立宇宙研究所(INPE)に所属し、グローバルな気候変動におけるアマゾンの役割を研究する科学者ルチアナ・ガッティ氏は語る。
「規制の執行状況と環境破壊に対する罰金制度を根本的に見直さなければ、そうした目標の達成は非常に困難だろう」とガッティ氏は言う。
同氏はさらに、たとえブラジルがこの新しい目標を達成できるとしても、アマゾンの一部地域ではすでに大規模な森林破壊によって大量の枯死現象が生じているとみられ、手遅れかもしれないと警告する。
ボルソナロ大統領の環境問題に関する論調がこれまで敵対的だったことから考えれば、今年のCOP26に臨むブラジルの姿勢には変化がうかがえる。だが、かつて「環境対策のリーダー」だった同国が復権するにはほど遠い状態だ。
グローバルな気候変動を巡る交渉全般の基礎を確立した1992年の国連環境開発会議(「地球サミット」)は、ブラジルのリオデジャネイロで開催された。さらにブラジルは2010年代初頭、森林破壊を大幅に減らして世界に模範を示すことで声望を高めた。
だが、気候変動枠組み条約に署名した大半の国々の首脳と違い、ボルソナロ大統領はグラスゴーに姿を現さなかった。
ブラジルが示した目標への批判について大統領府にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
なるほど、今年のCOP26でのブラジルの存在感は非常に大きい。政府・企業ロビー組織共同で設置した緑の葉で覆われたブースには巨大な双方向性スクリーンが設置され、外務、エネルギー、環境各省の当局者が定期的に一般向けのスピーチを行っている。
だが、ブースに掲げられたアジェンダからは、ブラジルの立場の変化はほとんど見えてこない。3日、コーヒーを楽しむ訪問客を前に、当局者はバイオ燃料政策の宣伝に終始した。農業ビジネス界から強く支持されているバイオ燃料だが、専門家の見解では、温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」を実現するためには、バイオ燃料とは決別する方針転換が必要だという。
イザベラ・テイシェイラ元環境相によれば、ブラジルの森林破壊防止案は細部が煮詰められておらず、現実味を欠いているという。
「数字が示されているだけで、戦略がまったくない」と同氏は言う。
<求められる変化は>
環境活動家が根本的な変化を期待している国はブラジルだけではない。温室効果ガス排出量が世界第4位のロシアには地球上の森林の約5分の1が存在しているが、ここ数年、大規模な山火事に見舞われている。
ロシアによれば、国内の森林による年間炭素吸収能力は二酸化炭素換算で約6億トン相当だが、山火事と伐採により約半分が失われているという。
グリーンピース・ロシアに参加する環境問題専門家ミハイル・クレンドリン氏は、ロシアは森林火災の消火、火災予防、さらには火災監視能力にもっと投資することが必要だと話す。
「ロシアにおいて最も重要なのは、原野火災の面積を大幅に減らすことだ。ここ数年、その面積は着実に増加しているからだ」とクレンドリン氏は語る。
ブラジルでは昨年、アマゾン川流域からレバノン1国に相当する面積の森林が消失した。2021年の森林消失面積は前年比では微減となるものの、依然として、2008年以来の規模であることに変わりない。
ボルソナロ政権下で、伐採業者や牧場主たちは大胆になっている。ボルソナロ大統領がこれらの業界を公然と支持し、環境規制、あるいはアマゾンの広大な領域を破壊から守っている先住民保護区域に批判的であることが、彼らを勇気づけている。
先住民のタウレパン族出身で、ブラジル・アマゾン先住民女性連合のコーディネーターを務めるテルマ・タウレパン氏は、ブラジル政府の声明や国際社会全体にわたる協定が森林破壊を食い止め、温室効果ガスの排出量を削減できるとはほとんど信じていないと語る。
COP26に参加したタウレパン氏は、グラスゴーで「各国政府は嘘をついている。排出量を削減すると言う一方で、大豆増産やアグリビジネスに補助金を出し、鉱物資源の採掘を助成しつつ、先住民の意見に耳を傾けないのだから」と語る。
アマゾンを研究する著名な気象学者の1人カルロス・ノーブル氏にとって、ボルソナロ大統領はとうてい信用しがたい。
「大統領がこれまでの政治的立場を変えたと信じるべき理由はない」と同氏は話した。
(Stephen Eisenhammer記者、Jake Spring記者、翻訳:エァクレーレン)
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2021-11-06 23:08:00Z
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