来年の米中間選挙への前哨戦として注目を集めていた米南部ヴァージニア州の知事選が2日投開票され、野党・共和党新人のグレン・ヤンキン氏が当選確実となった。複数の米メディアが同日深夜に速報した。
開票率95%以上で、ヤンキン氏はテリー・マコーリフ元州知事(民主党)に2.7ポイント差をつけてリードしている。共和党から同州知事が出るのは、2009年以来となる。
ヴァージニア州は昨年の米大統領選で、ジョー・バイデン氏が得票率54.1%で勝っている。今回の知事選はそのバイデン大統領への信任投票ともみられていただけに、来年の連邦議会中間選挙へ向けて、与党・民主党にとってはきわめて気がかりな敗北となった。
同州ではさらに、共和党が副知事選も勝利する見通し。ウィンサム・シアーズ氏は黒人女性として同州初の副知事になる。同州司法長官選や州議会下院でも、共和党が有利とみられている。
人種教育が主要争点に
州知事選では、治安や経済、ジェンダー、人工中絶、マスク義務化などのほか、公立校での歴史教育が争点となった。とりわけ、アメリカにおける人種差別問題を子供にどう教えるか、あるいは教えるべきでないかが、「批判的人種論」という呼び名のもとで、さかんに議論された。
「批判的人種論」という表現が何を意味するか、明確な定義はないものの、アメリカの保守派が使う場合は、白人による有色人種に対する差別や暴力について学校で教えることの是非が意味として含まれる。
知事候補の討論会で民主党のマコーリフ候補が、「学校が何を教えるか、親が口出しすべきではないと思う」と発言したことが、対抗勢力に一斉に攻撃されたりもした。
投資家のヤンキン氏は、人工中絶やマスク義務化に反対し、学校での「批判的人種論」の教育を禁止すると訴えた。
BBCがアメリカで提携するCBSニュースの出口調査によると、州の有権者の過半数が、教育や学校の指導要領が何より大事な論点だと答えた。
バイデン氏の支持率低下
開票に先立ちバイデン氏は、自分の就任以降初の主要選挙で民主党が勝つはずだと予測しつつも、大統領選の翌年の選挙は常に予測が難しいと認めていた。
アメリカではこのところ、インフレが進み、経済回復は遅れ、連邦議会の審議は膠着(こうちゃく)しているほか、アフガニスタン撤退の混乱から、バイデン氏の支持率が下がり続けている。各種世論調査の平均をとる「リアルクリア・ポリティクス」によると、11月1日の支持率は43%、不支持率は51.1%だった。バイデン氏の支持率と不支持率が逆転したのは、武装勢力タリバンによるアフガニスタン掌握から間もない8月20日だった。
トランプ氏の影響
民主党のマコーリフ陣営は、ヤンキン氏をドナルド・トランプ前大統領になぞらえて批判し続けた。ヴァージニア州では今もトランプ氏の人気は高くない。
一方、物腰の柔らかい資産家のヤンキン氏は、州内のトランプ支持者を取り込みつつも、トランプ氏に応援演説を頼まないなど一定の距離を保ち、穏健保守派にもアピールしようとした。
ヤンキン氏のこの路線は、トランプ氏の過激なスタイルを嫌った都市や郊外の穏健派共和党支持者の支持回復に成功した様子。来年の連邦議会中間選挙や2024年大統領選に向けて、共和党候補にとって有力なテンプレートになる可能性もある。
一方トランプ氏自身は早々にヤンキン氏の勝利を予測し、開票作業の早い段階で、「私の支持基盤が勢いよく投票に向かい、グレン・ヤンキンに投票してくれて、感謝する」と声明を出した。
「MAGA(アメリカをまた偉大にしよう)運動はかつてないほど大きく、強力だ」とも付け足した。
新知事は、2期を満了する現職ラルフ・ノーザム知事(民主党)の後任となる。
複数のマイノリティー市長
この日はほかにもアメリカ各で地方選が行われた。
- ニューヨーク市長選では予想通り、民主党のエリック・アダムス氏が当選。同市2人目の黒人市長となる。アダムス氏は元警察官。
- ボストン市長選では、ミシェル・ウー氏(民主党)が同市初の有色人種で女性の市長となることが決まった。
- ピッツバーグ市長選では、エド・ゲイニー氏が初の黒人市長に選出された。
- ジョージ・フロイドさん殺害事件で市民と警察の関係が揺れたミネソタ州ミネアポリス市では、ミネアポリ市警を解体して新しい市の公共安全局を立ち上げるよう求める提案が、住民投票で否決された
<解説> トランプ氏不在のトランプ方式――タラ・マクルヴィー、BBCニュース、ヴァージニア州フェアファックス
開票結果を大画面で見ようと集まった人たちで、レストランは混雑していた。
ごひいきのグレン・ヤンキン候補が州知事選に勝つのを、大勢で見届けようと集まった人たちは、誰もがベストな場所を探してひしめきあっていた。
あちこちに星条旗がある。
ヤンキン氏はこの数カ月、保守派が進む道を示してきた。アメリカにおける人種関係を繰り返し取り上げ、いわゆる「批判的人種論」を学校で教えるべきでないと主張した。
治安維持を重視し、マスク義務化に反対した。その主張の多くはトランプ節によく似ていた。しかしヤンキン氏は、前大統領からは距離を置き続けた。
そうすることによってヤンキン氏は、様々な論点についてトランプ氏の姿勢は支持するものの、トランプ氏本人には警戒心を抱く多くの有権者にアピールした。
ヤンキン氏のスタイルは今後、中間選挙へ向かう多くの保守派候補が参考にするガイドブックになるのだろう。
https://news.google.com/__i/rss/rd/articles/CBMiJWh0dHBzOi8vd3d3LmJiYy5jb20vamFwYW5lc2UvNTkxNDQ2MDnSASlodHRwczovL3d3dy5iYmMuY29tL2phcGFuZXNlLzU5MTQ0NjA5LmFtcA?oc=5
2021-11-03 06:42:29Z
CBMiJWh0dHBzOi8vd3d3LmJiYy5jb20vamFwYW5lc2UvNTkxNDQ2MDnSASlodHRwczovL3d3dy5iYmMuY29tL2phcGFuZXNlLzU5MTQ0NjA5LmFtcA
Tidak ada komentar:
Posting Komentar