<平壌の総合病院建設資金を調達するため金正恩政権は禁断の一手に、国債購入を拒否した事業者が処刑された話ももはや驚きに値しない>
北朝鮮経済の長年の謎の1つは、政府がどのように経済を維持しているのかということだ。現在、食糧と外貨の市場価格は基本的に安定しており、ガソリンなど一部の商品価格は通常より不安定ながら、危機と呼ぶレベルではない。
とりわけ不可解なのは、あらゆる指標を考えると国家財政は逼迫しているはずなのに、その兆候がほとんど見られないことだ。
市場価格のデータには必ずしも表れていないが、北朝鮮の国家財政がかなり深刻な影響を受けていると考えられる理由はいくつかある。恐らく、国家部門と市場部門は、多くの人が考えるほど密接には絡み合っていないのかもしれない。あるいは、政府による経済安定化策が、強制的なものにせよ市場介入にせよ、実際に効果を上げているのかもしれない。
しかし先日、北朝鮮の国家財政の苦境を物語るような報道があった。4月中旬に韓国のニュースサイト、デイリーNKが、北朝鮮政府が平壌総合病院の建設資金の一部を調達するために、17年ぶりに国債を発行すると伝えたのだ。
デイリーNKは国債が数日後に発行されたことを今月中旬に確認した。国家プロジェクトなどで必要な資材の代金支払いに充てられるという。
今回の国債は4割が個人向け、6割が法人向けになるとみられる(債券の条件の詳細は、筆者の知る限り現時点では不明)。デイリーNKが取材した複数の情報筋は、当然のことながら批判的で、北朝鮮政権が切実に必要としている現金を、特に外貨を吸い上げるための措置とみている。
資材工場などの業者は、現金ではなく国債での決済を強いられる。さらに、「トンジュ(金主)」と呼ばれる北朝鮮の新興の富裕エリート層は、国債を購入しなければ法的な処罰を受けたり、自分の事業に損害が及びかねないと、デイリーNKの情報筋は警鐘を鳴らす。
高官は米ドルを蓄財
一方で、国債発行の計画を受けて、政権高官が米ドルをため込み始めたと言われている。北朝鮮の秘密警察である国家保衛省は、北朝鮮ウォンから外貨への交換の取り締まりを4月17日から始めたと伝えられている。
北朝鮮が(報道によるところの)国債発行に踏み切ったのはなぜか。国債とは、簡単に言えば、購入者(投資家)から発行者の国に融資するという契約だ。もちろん、政府が債券を発行すること自体は、ごく普通のことだ。
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2020-05-27 09:30:00Z
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