韓国政府は6日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出や集会の規制を緩和した。人口約243万人の南部・大邱(テグ)市で2月半ばに始まった「感染爆発」を収束させ、4月下旬以降は国内の新規感染者を10人以下に抑え込んだ日も多かったからだ。だが8日にソウル市内のナイトクラブで集団感染が判明し、再び感染が拡大することも懸念される。感染拡大の防止と社会・経済活動再開の両立に向けた試行錯誤が続いている。【渋江千春】
「多くの感染者を隔離・治療する施設を作ったことが、新型ウイルスのさらなる拡散を防いだ」。大邱市の権泳臻(クォンヨンジン)市長は、毎日新聞の取材に強調した。
韓国政府の拡大防止策は、積極的な検査を行うことで、感染者を早期発見し、隔離入院させるのが特徴だ。大量検査のため、民間病院でも対応できるようにした。携帯電話の位置情報などから感染者の移動経路を入手し、自治体のホームページなどで公開。いずれも2015年の中東呼吸器症候群(MERS)で初動が遅れて、死者38人を出した苦い経験を踏まえた対応で、新型ウイルスの抑え込みに効果を発揮してきた。
だが、新興宗教団体の集団礼拝をきっかけに、大邱で起きた局地的な感染拡大のスピードは、政府の想定を超えるものだった。「感染者の早期発見に向けて検査すればするほど、感染者が増え続けた」(権市長)。最初の患者が見つかった2月18日から10日足らずで市内の感染者は1000人を突破。政府と大邱市は、一般病床も転用したが追いつかず、自宅での入院待機者が増えていった。重症度などに応じて患者の治療優先順位を決める「トリアージ」も機能せず、過去に腎臓移植を受けて、重症化リスクが高いのに「入院待ち」をしていた70代男性が、病院へ緊急搬送されるも直後に死亡する事例も起きた。
「なぜ、こんなに症状の軽い人々を入院させなければいけないのかと思った」。大邱市医師会の李聖亀(イソング)会長は2月下旬、新型ウイルス感染者専用となった市内中心部の病院に駆けつけた時の違和感を振り返った。患者はたくさんいるのに、症状を尋ねると「痛いところは特にない」と答える人が大半だったからだ。
医療提供体制が逼迫(ひっぱく)する中、医療現場から出てきたのが、無症状・軽症者を収容して治療する「生活治療センター」の設置案だった。医療団体からも同様の訴えが相次…
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2020-05-12 01:00:00Z
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