【ワシントン＝大内清】世界の犯罪組織が利用する通信アプリは捜査機関が開発した「おとり」だった－。米欧などの捜査当局は８日、米連邦捜査局（ＦＢＩ）などが独自開発した暗号通信アプリを、そうとは気付かれないように犯罪組織に利用させて情報収集する国際的な合同捜査の結果、世界７００カ所への一斉捜索で計約８００人を逮捕したと発表した。欧州警察機関（ユーロポール）は「史上最大規模で、最も洗練された作戦」だと意義を強調した。
発表によると、アプリは２０１９年以降、ＦＢＩがオーストラリア連邦警察の協力で開発・運営してきた「ＡＮＯＭ」と呼ばれるもの。痕跡が残りにくくメッセージも消去できるなど表面上は犯罪組織が頻繁に利用する各種の暗号通信アプリと同等の機能だが、実際にはひそかに通信記録のコピーをＦＢＩに送信できるようになっていた。
このアプリは、１００カ国以上で３００以上のギャングや麻薬密売組織が利用するまでに〝成長〟。そこでやり取りされる犯罪の指示や相談は、捜査当局に筒抜けとなった。
「トロイの盾」と名付けられたこの作戦にはＦＢＩやユーロポール、欧州各国のほか、豪州など十数カ国の捜査機関も参加し、１年半以上にわたって２７００万通ものメッセージを監視・分析した。一斉捜索では約８００人を逮捕したほか、３０トン以上の違法薬物や４８００万ドル（約５２億円）超に相当する現金や暗号資産などを押収した。
作戦を主導したＦＢＩ幹部は声明で、「第一の目的は、貴重な捜査情報を収集するとともに、暗号通信ネットワークへの（犯罪者たちの）信頼を失わせる」ことにあったと指摘。暗号通信はもはや犯罪組織にとって安全な「隠れみの」にはならないと強調した。
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2021-06-09 07:58:46Z
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