【香港=木原雄士】中国共産党に批判的な香港紙・蘋果日報(アップル・デイリー)の経営状況が一段と厳しくなってきた。ロイター通信は21日、数日以内に事業停止を迫られるとの関係者の見通しを報じた。同紙を発行する壱伝媒(ネクスト・デジタル)は21日に取締役会を開き、今後の経営の方針を決める。
蘋果日報をめぐっては創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏に加え、壱伝媒の張剣虹・最高経営責任者(CEO)や羅偉光・編集長、関連法人3社が香港国家安全維持法違反罪で起訴された。香港当局は関連3社の資産を凍結し、従業員の給与支払いなどが難しくなったとの見方が出ている。
ロイターによると、黎氏の顧問を務めるマーク・サイモン氏は「今月末まで持ちこたえられると考えていたが、状況はますます厳しくなっている。数日の問題だ」と述べた。銀行に外部から同社口座への入金を拒否され、支援が難しくなっているという。
蘋果日報は香港当局に資産凍結の解除を申請する方針だが、当局が応じる可能性は低い。香港メディアによると、先行きを悲観した従業員の離職が相次いでいる。米ブルームバーグ通信は同社が21日にも経営を存続させるか決める方針だと報じた。
蘋果日報は香港で民主派支持を鮮明にするほぼ唯一の日刊紙。中国当局は民主派に影響力を持つ黎氏を繰り返し批判してきた。黎氏は抗議活動に関する複数の実刑判決を受けて服役中だ。香港警察は今月、500人態勢で同社を捜索し、パソコン40台とサーバー16台を押収するなど圧力を強めていた。
香港は「一国二制度」のもと、報道の自由が保障されてきた。その象徴的な存在だった蘋果日報が国家安全法による摘発をきっかけに休刊に追い込まれれば、香港の他のメディアへの規制や抑圧がより強まる可能性もある。
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2021-06-21 04:15:00Z
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