<公の場に4ヶ月ぶりに姿を現したトランプ氏は、中国はアメリカと世界に賠償金を支払うべきだとの立場を示した>
新型コロナウイルスをめぐり、武漢のウイルス研究所を起源とする説がにわかに再注目されている。国際世論の厳しい目が中国に注がれるなか、この流れにトランプ前大統領が加勢した。
トランプ氏は6月5日、東部ノースカロライナ州で開かれた共和党集会で演説し、武漢の研究所流出説が再び真実味を帯びてきていると指摘した。「中国は彼らがもたらした死と破壊の代償として10兆ドルを、アメリカ、そして世界に対して支払うべきだ」と述べたほか、制裁として中国製品に100%の関税を適用すべきだとの考えを明らかにした。
さらにトランプ氏は、「中国共産党の賠償と責任をアメリカと世界が要求すべき時がきた」「我々は皆一丸となり、中国は償わねばならないと宣言すべきだ」と支持者たちに呼びかけた。具体的な手段としては「第一歩として、あらゆる国々が共同して中国に対するすべての負債を放棄し、賠償金の頭金とすべきだ」と踏み込んだ案を示した。
昨年からトランプ氏は人工ウイルス説を支持していた
研究所流出説については今年2月、その可能性は薄いとする調査結果をWHOの調査チームが発表している。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が5月下旬、パンデミック以前にウイルス研究所の研究者3名が体調を崩していたことを報道。バイデン大統領が90日間の再調査を米情報機関に対して指示たことで、にわかに信憑性が高まった。フェイクニュースだとして研究所流出説の投稿を禁止していたフェイスブックはこれを受け、かかる措置を解除している。
ワシントン・ポスト紙は米外交問題評議会・上席研究員のヤンゾン・ファン氏による寄稿記事を掲載した。記事は、「中国に限らずとも研究施設からの漏洩は起こるものであり、真剣に捉える必要がある」「これまで中国はパンデミックの封じ込めで世界から名声を得ており、とくに西洋諸国との比較で顕著だった。しかし、もし中国の科学者たちがそのパンデミックの原因だったとすれば、そうした栄誉は急速に消え去るだろう」と論じ、真実であれば中国のソフトパワーに大きな変化をもたらすとの見通しを示している。
トランプ氏は演説のなかで、研究所由来の人工ウイルスとする説を自身が早くから支持していたとも述べ、その実績を強調した。氏は「今となってはいわゆる『敵』も含め、武漢研究所からの流出説に関してトランプ大統領は正しかったのだと口にしはじめている」との認識を示している。
かつての政敵に反撃を繰り出す
研究所起源説の再興は、トランプ氏が任期中に対立していた米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長に対し、一矢報いることにもなりそうだ。在任中のトランプ氏は感染対策をめぐり、ファウチ氏を「大災害」と表現するなど激しく対立していた。
演説でトランプ氏は、「ファウチ博士と中国とのやり取りは誰にも無視できないほど明白だ」と述べ、武漢の研究所との関係をめぐる疑惑の渦中にあるファウチ氏を厳しく批判している。ファウチ氏は公式には自然発生説を唱えながら、ラボでの遺伝子操作を示唆する不自然な性質がウイルスにあったことを早期に認識していた疑いが持たれている。
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2021-06-07 09:00:00Z
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