【ワシントン=河浪武史】トランプ米大統領は22日、米議会が可決した9000億ドル(約93兆円)の新型コロナウイルス対策法案の修正を求め、現行案のままなら署名を拒否すると表明した。2021年1月3日の新議会の発足前に修正できなければ廃案になるリスクもある。退任間際のトランプ氏の「暴発」は、米経済を想定外の危機の縁に立たせる。
トランプ氏は22日、ツイッター上の演説で経済対策の内容修正を求めた。「現金給付額は(1人当たりで最大)600ドルと極めて少なく、2000ドルに引き上げるよう議会に求める」と主張。「不要な項目を除いた法案を再送付してこなければ、経済対策は次期政権でまとめることになる」などとも述べた。
米上下両院は21日夜、9000億ドルの経済対策を可決し、トランプ氏に関連法案を送付した。与野党協議に参加していたムニューシン財務長官は22日に「超党派の可決を歓迎する」などと述べ、トランプ政権として経済対策に賛同する考えも表明していた。トランプ氏の突然の法案修正の要求は、議会にとって「寝耳に水」となる。
トランプ氏が法案署名を拒否する場合は、日曜日を除いた10日以内に議会に差し戻す必要がある。ただ、議会は3分の2の賛成多数で関連法案を再可決すれば、大統領の拒否権を覆して法案成立にこぎ着けられる。9000億ドルの経済対策は下院で359対53、上院も92対6のいずれも3分の2以上の賛成多数で可決しており、再議決による成立は可能だ。
ただ、そこにはハードルがある。政府機関に運営資金を与える21会計年度(20年10月~21年9月)のつなぎ予算は、28日までが期限だ。9000億ドルの経済対策法案は21会計年度本予算と一体化しているため、トランプ氏が法案を抱え込んで28日までに議会へ差し戻さなければ、連邦政府予算そのものが失効して、政府機関の一部閉鎖に追い込まれかねない。
26日には3月に発動した失業給付の特例措置も期限切れとなり、自営業者らも含めて1200万人の収入が大幅に失われる懸念がある。12月末には家賃滞納者の強制退去の猶予措置も切れ、1月には500万人が住居の立ち退きを迫られる可能性もある。トランプ氏の「署名拒否」は、政府予算と家計収入という2つの「人質」をとっており、議会には強烈な打撃となる。
そのため、議会はコロナ対策法案の修正協議に入る可能性がある。民主党のシューマー上院院内総務は22日、トランプ氏の法案修正の要求に対して「民主党は2000ドルの現金給付を求めてきた。救済策の増額には賛成だ」などとするコメントを出した。民主党はもともと2兆ドル規模の巨額の経済対策を主張し、トランプ氏の「ちゃぶ台返し」に同調しつつある。
最悪のシナリオは、9000億ドルの経済対策の白紙撤回だ。現行案では600ドルの現金給付に1660億ドルの予算を充てているが、支給額を2000ドルに引き上げれば予算は3倍以上に膨らむことになる。議会共和党の財政保守派は反発が必至で、修正協議は迷走する可能性が高い。
1月3日の新議会の発足前に経済対策が成立しなければ、関連法案は廃案となり、次期体制で一から審議し直す必要がある。失業給付の失効などで米経済は「財政の崖」に直面することになる。
米国はコロナ危機下にもかかわらず、株価が最高値圏にあるが、それは巨額の経済対策で景気を下支えするとの期待があるからだ。「レームダック期間」に入ったトランプ氏の予測不能な政策判断に、政治も経済も再び翻弄されることになる。
https://news.google.com/__i/rss/rd/articles/CBMiPGh0dHBzOi8vd3d3Lm5pa2tlaS5jb20vYXJ0aWNsZS9ER1haUU9HTjIzMlgyMFQyMUMyMEEyMDAwMDAwL9IBAA?oc=5
2020-12-23 04:50:06Z
52782951524704
Tidak ada komentar:
Posting Komentar