異例の政権3期目入りを果たし中国の実権をほぼ一手に握った習近平国家主席が、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を欠席しようとしている。
中国外務省の毛寧報道官は北京で4日開いた定例記者会見で、G20サミットには李強首相が出席すると述べた。習氏については触れなかった。
習氏がニューデリーで開催されるG20サミット参加を見送るのは、インドとの外交面での対立が原因かもしれない。あるいは、ブラジルとロシア、インド、中国、南アフリカ共和国から成るBRICSが来年から11カ国体制になることが先月決まり、BRICSを重視したい思惑もあるだろう。
中国経済は国内最大級の不動産開発会社がデフォルト(債務不履行)の瀬戸際にあり、こうした経済問題に対処するため国内にとどまりたいと考えている可能性もある。
理由が何であれ、G20欠席は習氏の外交活動に大きな変化をもたらしそうだ。2012年に中国共産党総書記に選出され、13年に国家主席に就いて以降、習氏はこれまでG20サミットに毎回出席してきた。
インドネシアのバリ島で昨年開催されたG20サミットに参加した習氏はバイデン米大統領との会談で対話の重要性を強調し、「他国とうまく付き合うことが政治家の責任だ」と語っていた。
投資家の懸念
習氏は今、異なるアプローチを採用しつつあるように見える。中国経済の行方や台湾に対する軍事侵攻の可能性、ウクライナ侵略後の対ロシア支援などについてG20サミットに出れば浴びせかけられるだろう厳しい質問を回避しようとしているのかもしれない。
この動きはまた、中国がますます予測不可能になってきているという投資家の懸念をも強めている。レモンド米商務長官は先週の訪中時、中国はリスクが高過ぎて「投資できない」国になりつつあるとの指摘を米企業から受けた。
中国経済停滞にチャンスとリスク見て取るG7各国-米欧でギャップも
習氏は8月、BRICS首脳会議に参加するためヨハネスブルクを訪問。この首脳会議には今年のG20議長国であるインドのモディ首相も出席していたが、今週末のG20サミット参加見送りで同首相の晴れ舞台を台無しにすることは、BRICSが一体となって発言する力の限界を露呈することになる。
習氏が出席する世界を舞台にした次の大きなイベントは、北京で10月に開催される「一帯一路フォーラム」だろう。G20サミットを欠席するロシアのプーチン大統領も参加を表明している。
シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院の呉木鑾(アルフレッド・ウー)准教授によれば、習氏は今や「皇帝マインド」を抱いており、外国の要人が自分のところにやって来ることを期待しているという。
中国が厳格な新型コロナウイルス規制を解除して以後、ドイツとフランスの首脳、そしてバイデン政権の高官4人の北京を訪問。「習氏は外国からの要人を自国に迎える際、非常に高いステータスを示せる。BRICS首脳会議でも特別待遇を受けた。しかし、G20ではそうもいかないだろう」と呉准教授は指摘している。
習氏は昨年10月の共産党大会で、毛沢東初代国家主席以来最も強い中国指導者としての地位を固めた。その習指導部の下で、数十年にわたり続いてきた中国経済の急成長が失速しつつある。
以前ニューデリーに駐在していた北京のある外交官は、習氏は領土問題を抱えるインドの世界的名声を高めることを目的としたイベントに参加することにあまり興味がないのではないかと疑念を抱いていた。
「毛沢東」化
習氏のG20サミット不参加は、アルゼンチンやサウジアラビアといったG20の友好国首脳と直接対話する機会を逸することを意味する。東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出を巡り中国が日本を批判し続ける中で、G20サミットで岸田文雄首相と直接顔を合わせることもなくなる。
習氏は信頼できるグループ内で中国の力を強化することに重点を置いていると米国防総省に勤務した経歴のあるリー・クアンユー公共政策大学院のドルー・トンプソン上級研究員は分析。「BRICSや上海協力機構(SCO)のような中国がアジェンダを指示できるような、より小規模な新興国グループを牛耳ろうとしている」とみている。
先月のBRICSビジネスフォーラムで、参加が予定されていた習氏は姿を見せず、自身のスピーチを王文涛商務相に代読させた。他のBRICS加盟国首脳は出席した。
アジア・ソサエティー政策研究所の中国分析センターで中国政治を研究するニール・トーマス研究員によると、こうした出来事は習氏が国民生活に関する政策より壮大な構想を優先させており、同氏のリーダーシップが「毛沢東」化しつつあることを示唆している。このスタンスの変化はリスクが伴い、「習氏がこの道を進めば進むほど、直面する課題と切り離され政策決定がされることになる」とトーマス氏は話す。
G20の寿命
習氏が次に外遊すると見込まれるのは、サンフランシスコで11月に開催されるでアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議だ。だが、ホワイトハウスは香港政府トップの李家超行政長官を招待しない方針だと報じられており、習氏の出席には疑問が投げかけられている。李氏は香港での自由などへの統制を巡り、20年に米政府の制裁対象となっている。
インドのO・P・ジンダル・グローバル大学で外交慣例を教えるカリン・バスケス准教授(上海在住)は「確かに対話の機運は熟していない」と述べ、G20サミットでの共同宣言がこのところイデオロギーの対立によって妨げられてきたことに触れた。
華東師範大学(上海)のジョセフ・グレゴリー・マホニー教授(政治学・国際関係学)は、こうした外交イベントで加盟国が派手なパフォーマンスをするのが一般的になっていると説明。G20では「中国とインドの2国間関係が米中関係よりも重要だ。G20の実質的な寿命が尽きつつあるのではないかという疑念が生じる」と語っている。
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原題:Xi’s G-20 Snub Marks Shift From Statesman to China ‘Emperor’ (1)、China to Send Premier to G-20 Summit in India(抜粋)
(2段落目に中国外務省の記者会見を追加して更新します)
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2023-09-04 04:58:03Z
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