
異例のことである。4月10日に予定されていた最高人民会議(国会にあたる)が延期された。
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毎年4月に開かれる最高人民会議は、形式上、唯一の立法機関、最高主権機関と位置づけられ、前年の決算と次年度予算の承認、法や憲法の改定などを行う。金一族独裁の北朝鮮にあって、建前であっても「共和制」を採っていることを示す重要な会議である。開催は3月に告知されていた。
一方、金正恩氏の司会で労働党中央委員会政治局会議が11日に開かれた。朝鮮中央通信の記事を整理すると、討議のポイントはコロナウイルス対策、国家予算の承認、労働党最高幹部の人事の3点だった。金正恩氏の実妹の金与正(キム・ヨジョン)氏が党中央委員会政治局委員候補という核心幹部に復活したことが目を引いた。
◆最高人民会議は延期した理由は何か?
重要な最高人民会議を延期したのはなぜか? 開けなくなったからには理由があるはずだ。最高人民会議の代議員は700人弱とみられ、全国から平壌に召集される。この中にコロナウイルスの感染者、あるいは感染が疑われる人がいたのかもしれない。あるいは、今になって、国内で感染者の数が増えたのかもしれない。
予断は禁物であるが、コロナウイルスに関連する事情が生じた可能性について考えてみたい
金正恩政権のコロナウイルス流入遮断策は迅速だった。春節前の1月22日に中国人観光客の入国を止め、1月末には中国国境を完全に封鎖。それまでに中国人と接触していた人を徹底隔離した。人権や個人の都合などお構いなしの強権体制ゆえ、初期の国内防御には成果があったものと思われる。
平壌に駐在する世界保健機構(WHO)のエドウィン・サルバドール事務所長は、ロイター通信の取材に「4月2日までにコロナウイルス診断検査を受けたのは709人だと北朝鮮当局から報告を受けた」
と述べた。
この報告が正しいのか不明だが、感染検査数がわずか709というのはあまりに少ない。北朝鮮政府は1月以来、約1万人を隔離してきたと発表しており、その7%しか検査できていないことになる。
北朝鮮当局は「感染者ゼロ」という発表を続けている。その真偽は不明だが、感染の有無を調べるキットや機器が足らず(あるいは地方都市にはまったくなく)、医療・防疫当局も、判定しようかなかったのではないか。
WHOにはよれば、中国政府は感染検査(PCR)に必要な装備を1月から北朝鮮に支援していた。ロシアも2月に北朝鮮の要請に応じて感染検査キット1500個を寄付したと発表している。
これら限られた検査器具は、平壌の政権中枢とその周辺、外国人と接触の多い部署、軍隊などに優先的に投入されたと考えられる。
アジアプレスでは、北朝鮮国内の取材協力者が中国国境に近い恵山市、咸鏡北道茂山(ムサン)郡、会寧(フェリョン)市、清津(チョンジン)市などで、病院関係者と防疫当局者と接触して調べたが、4月10日時点で、コロナウイルス感染検査を実施しているという情報は一件もなかった。
地方都市では検査不能状態が長く続き、感染者発生の有無すら判断できなかったのではないか。
ユニセフや「国境なき医師団」の支援物資が入ったのは3月末になってのことだ。北朝鮮で感染検査が本格化するのはやっと今からだ、というのが筆者の推測である。
◆経済悪化は深刻
コロナウイルスの流入を防ぐため、金正恩政権が1月末に中国国境を封鎖していたことは述べた。初期の防疫には効果があったが、その副作用は深刻だ。貿易が止まって中国に依存してきた物資が入ってこなくなった上、国内の移動統制が厳しくなり物流が麻痺している。商行為や荷役などの日雇い仕事で日銭を得ていた庶民層に大きな打撃が出ている。
物資の調達、貿易や観光などの外貨収入は大打撃を受けているはずで、金正恩氏が描いた今年の国家運営計画には大きな狂いが生じていることだろう。最高人民会議の突然の延期は、北朝鮮内部で何らかの異変が生じたためである可能性がある。注視していきたい。
追記
12日に北朝鮮北部に住む取材パートナーに問い合わせたところ、最高人民会議の延期について当局からの説明はないという。一方で、12日から住んでいる地区内を保安員(警察官)が常時巡回するようになり、「保安員たちが町内に暮らしいるような状態だ」と伝えてきた。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
https://news.google.com/__i/rss/rd/articles/CBMiPWh0dHBzOi8vaGVhZGxpbmVzLnlhaG9vLmNvLmpwL2hsP2E9MjAyMDA0MTMtMDAwMTAwMDAtYXNpYXAta3LSAQA?oc=5
2020-04-12 20:10:29Z
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