<「愚策」を恥ずかしげもなく褒めたたえ、本当に対策の必要な問題については語らず、民主主義のルールも何のその──共和党が目をつぶる不都合な真実>
政党の全国大会が厳粛で冷静な分析の場になるとは、誰も思っていない。その意味で、8月24~27日に開催された共和党全国大会は期待を裏切るものではなかった。
それどころか、いつものように党派対立をあおる情報操作や、ドナルド・トランプ米大統領への熱烈な称賛だけでなく、強引に歪曲した解釈、恥ずかしいほどの追従、規範や法律の衝撃的な違反、そして、多くのあからさまな嘘で埋め尽くされた。
特に悪質なのは、トランプが前例のない経済的成果を上げてきたという主張だ。実際は、現在の景気後退が始まる前でさえ、経済成長と雇用創出は近年の大統領に比べて鈍化していた。
さらに、あらゆる移民を制限しようと執念を燃やすトランプを、移民に友好的と持ち上げた。そして、おそらく最も醜悪なのは、新型コロナウイルスによるアメリカの死者数は今のところ世界最多で、20万人に届こうとしているのに、トランプの対策を驚くほど称賛したことだ。
外交実績に関する歪曲は、もはや不条理に近い。米中関係は、実際はぼろぼろだ。今年2月に発効した米中貿易協議の「第1段階」合意は目標達成に程遠く、次の段階の交渉は当面、望めそうにない。
マイク・ポンペオ米国務長官は、トランプが中国の悪い行いを「暴いて」、新型コロナについて「中国に責任を負わせた」と強調した。その一方で、トランプの貿易戦争がアメリカ人に背負わせる巨額のコストや、対中貿易赤字の削減に失敗したことは、都合よく見過ごしている。
「トランプ大統領のおかげでNATOが強化された」という称賛も、実際はNATO加盟国の大半を疎遠にし、同盟の存在理由である相互防衛保障を弱体化させている。
北朝鮮に関しては、ポンペオはトランプが「緊張を緩和させている」と褒めそやすが、そもそも緊張を高めたのはトランプだ。「あらゆる予想を覆して」金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を対話の席に着かせたという賛辞も、首脳会談を熱望していたのは金で、しかも金は会談で譲歩しなかったのだから、首をかしげたくなる。
他の演説者も似たような目くらましを使った。ランド・ポール上院議員は、トランプが民主党大統領候補のジョー・バイデン前副大統領と違って、イラク戦争に反対したと印象付けようとした。実際はトランプも当初は支持しており、侵攻から1年以上たって考えを変えたにすぎない。
語られない本当の問題
リチャード・グレネル前駐ドイツ米大使は、トランプがアンゲラ・メルケル独首相を「魅了」した場に居合わせたと語った。おそらくメルケル自身は選ばない言葉だ。
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2020-09-04 06:50:00Z
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