【北京=原田逸策】トランプ米大統領が中国製品への追加関税の引き上げ方針を示したことを巡り、中国政府は米国との貿易協議の継続に意欲を示した。外務省の耿爽副報道局長は6日の記者会見で「中国の交渉団は訪米して協議にのぞむ準備をしている」と語った。同時に「追加関税による脅しへの中国の立場と態度は明確だ」とも語り、態度を硬化させる可能性も残している。
米中両政府の閣僚級貿易協議は8日からワシントンで計画する。劉鶴副首相が訪米する予定だったが、トランプ氏が5日に中国製品2千億ドル(約22兆円)分への追加関税をいまの10%から25%へと上げる方針を示し、実現が危ぶまれていた。
耿氏は「我々は米国と共に努力し、相互に利益となる、ウィンウィンの協定を希望する」と述べ、協議に前向きな姿勢をみせた。交渉団の訪米準備も明らかにした。
一方で、協議の具体的な日程を問われると「関係部署に聞いてほしい」の一点張りだった。協議が予定通りに8日から始まるかどうかの言質は最後まで与えなかった。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は6日に「劉氏は9日に訪米するか、訪米そのものを取り消すかだ」と報じた。訪米しても1日間の滞在にとどまるという。もともとは6日に中国を出発する予定だったとしている。
耿氏はトランプ氏の追加関税の引き上げ方針について「似たような状況はこれまでも何度もあった。中国の立場と態度は明確で米国も十分にわかっている」とも語った。
耿氏がいう「立場」とは、2018年9月の米中貿易に関する白書に盛り込んだ「交渉はお互いの尊重と平等が前提。関税のこん棒で脅されてはできない」を指している可能性がある。実際、同年9月には米中は閣僚級協議を調整していたが、トランプ氏が追加関税の発動方針を表明したことで中国側が協議を取り消したことがある。
耿氏の発言は協議継続への意欲を見せつつ、取り消しの余地も残したといえる。それだけトランプ氏の唐突な関税上げ方針に、習近平(シー・ジンピン)指導部も態度を決めかねているとみられる。
中国は今年10月、建国から70周年を迎える。習指導部は国威発揚に余念がない一方、6月4日には天安門事件の発生から30年となることもあり、世論の動向に極めて神経質になっている。
とくに対米関係の不安定化、貿易協議での譲歩には党長老らの不満が強いとされる。習氏としては天安門事件の前に協議を大筋でまとめ、党内の不満を鎮めたかったとみられるが、トランプ氏の予測不可能な言動によって先行きは不透明になった。
米国は南シナ海や台湾周辺海域でも軍艦の航行を活発化させており、貿易にとどまらず軍事面でも中国に圧力をかける。習氏としては米国との決定的な対立は避けたい一方、大幅譲歩には「弱腰」批判がつきまとう。米中関係をいかに軟着陸させるか。習氏が解く方程式は一気に難しくなった。
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2019-05-06 10:04:00Z
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