【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮が9日、事実上の短距離弾道ミサイルを含む複数の兵器を同時多発的に発射した。韓国や在韓米軍を標的にした新兵器が実戦配備段階に達したと誇示する狙いとみられる。だが、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の相次ぐ揺さぶりもあり、毅然(きせん)とした立場を打ち出せずにいる。
韓国軍は、発射されたうち3発は2日に発射されたのと同じ「超大型放射砲(多連装ロケット砲)」と分析。昨年8月以降、5回発射され、軍当局が軌道などから実質的な短距離弾道ミサイルとみる新兵器だ。
1、2発目は前回と同じく約20秒間隔で発射され、連射性能の着実な向上を裏付けている。ただ、2、3発目には約1分間の間隔があいており、連射に関しては改良段階の可能性もある。
北朝鮮は新型コロナウイルスの拡散を防ぐために国内統制を強化。朝鮮人民軍の冬季訓練も中断といえるほど大幅に縮小されたという。韓国情報当局は、2日の発射について訓練縮小に伴う内部の動揺を払拭する目的があったと分析する。
一方、試験ではなく、実戦想定の訓練として別の放射砲と織り交ぜて発射されており、韓国への脅威が高まったのは確かだ。
今回の発射に対し、韓国軍は9日、強い遺憾を表明したが、大統領府は「朝鮮半島での平和定着の努力に役立たない」との立場を発表したのにとどまった。
2日の発射に大統領府が強い遺憾を示して中止を求めたところ、北朝鮮は3日、正恩氏の妹、金与正(ヨジョン)党第1副部長名義の談話で激しく非難した。半面、正恩氏は4日に文大統領に親書を送って感染拡大阻止に取り組む韓国をねぎらった。
大統領府のトーンを弱めた立場表明は、正恩氏のこうした揺さぶり策が有効であることを示している。
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2020-03-09 10:37:00Z
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